けいおん

□強がりボーイ
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街灯が並ぶ真っ暗な道を真っ直ぐ走る。家に着いたのが10:00。それからお風呂も着替えもせずに家を飛び出した。向かう先はもちろん愛してやまない彼女の家。三日ぶりの再会、どんだけ淋しかったか。もう本当寂し過ぎて死ぬ思いだった。ピンポーン、私にも聞こえるぐらいの音が鳴り響く。すると間髪いれずにプッと回線が繋がる音とともに「はい、」っと可愛らしい声が聞こえた。やっぱり幼い頃からの仲でも母親がいるときは行儀よくしなければ。親しき仲にも礼儀あり……?だったっけな。ま、そんな感じだ。澪のお母さんからの許可を終え、「おじゃましまーす」っと叫びながら足は自然と速まりもう何度も足を運んだ階段を全力で駆け上がった。ここに澪がいるんだ。嬉しすぎてもうやばい。ドアを空けて名前を呼ぼうとしたが、それは次の光景が目に入って喉まで来ていた声を無理矢理押し込めた。

ゆっくり、足音を立てずにベッドに近づけばそこにはピンクのクッションを枕にして眠る澪の姿だ。おい、おい。クーラーがんがんだぞ。風邪引くだろーが。そんなことを思いながら苦笑を漏らすも、すぐに顔は強張った。澪の顔を覗き込んだ時に感じた違和感。



「澪、」


ごめん、本当に。澪の頬に残る一線の後は容易に想像出来た。澪に淋しい思いをさせてしまった。家庭の事情だから私が悪いわけじゃないけど、それでも淋しさを与えたのは私なのだ。自己嫌悪は少なからずしている。そっと伸ばす指先で涙の後を辿った。そのままシルクに散らばる漆黒の綺麗な髪を指に絡める。たった三日だけだ。それでも私達には"三日も"なのだ。澪の家に泊まる時の私専用寝巻きを探して身に纏う。あ、風呂入ってない。ま、いいか。起きた時入れば。それよりも直に澪の温もりを感じるのが先だ。澪を起こさないように緩慢な動きで横になる。いつもは強がってばかりだけど、今日は君で早く充電したいんだ。素直に甘えさせてくれないか?



揺りそうように澪の首筋に顔を埋め、ギュッとシャツを握った。そのまま頭を撫でながら私の双眸はいとも簡単に垂れ下がった。









強がりボーイ




そんな私は、もういない








       2010.0622:強がりボーイ









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