けいおん

□ライムの愛情
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  いたっ、突然の衝撃に思
  わず零れた言葉にも全く
  耳を貸そうともしない目
  の前の彼女を睨み付けた
  。背中に感じる無機質な
  冷たく硬い壁、手首を強
  く捕まれそこに押さえ込
  まれた。「律、痛い」、非
  難の声をあげようとも一
  向に手首への力は緩むこ
  とはなく、むしろ余計に
  強くなった気がする。私
  から見て俯いた彼女の表
  情はわからなかった、け
  どその身に纏う雰囲気に
  怒っているのだと容易に
  理解したがその理由が見
  付からない。私が何かし
  てしまったのだろうか?
  一気に不安になる、何か
  したからこうなったんだ
  。律はそう安々怒るよう
  な人ではない。寧ろ何だ
  かんだ、私の全てを受け
  止め包んでくれていた。

  「り、…ん」

  律、私なんかしたか?そ
  う聞きたかったのにそれ
  は強引に重ねられた唇に
  口の中でくぐもった。突
  如、ヌルッとした感触が
  私の口内と舌に分け隔て
  なく感じる。壁に身体ご
  と押し付けられるように
  密着させなが、貪欲に唇
  を貪られた。唇と唇の間
  から漏れるどちらとも言
  えない吐息と、上気する
  表情。切なげに眉を寄せ
  、うっすらと目を開けば
  、細く開かれた茶色の瞳
  とぶつかった。その瞬間
  に唇は離され首筋に顔を
  埋め、勢いよく吸われる
  。微量なその刺激に「あ
  、」と声が漏れ、急いで
  自分の手首で口を塞ぐ。
  唇を離すことなく徐々に
  下に移動する。鎖骨、胸
  元と次々に独占の印しを
  刻み込む。

  「り、つ…」

  唇に押し当てていた腕を
  離し、柔らかい茶色の髪
  を撫でた。すると律の動
  きがピタッと止まる。強
  く握られていた手首の力
  も弱まり、ゆっくり抜け
  出した。律の頬を両手に
  包み込みゆっくり、上を
  向けて優しく唇を落とす
  。押し当てるだけのそれ
  に、一杯の愛情を注ぎ込
  むように唇の柔らかさと
  暖かさを感じ取る。宙を
  舞っていた律の腕が優し
  く私の腰に巻かれ抱きし
  められた。ゆっくり離せ
  ば、律の頬に一筋涙が零
  れる、滅多に泣かない律
  に胸が締め付けられるよ
  うなそんな感覚が全身を
  駆け巡る。

  「ごめん、澪」
  「違う、律は悪くない」

  苦しい、苦しい。私は律
  を悲しませた。泣かせた
  。もう私の中はぐちゃぐ
  ちゃだ。ごめん、ごめん
  、律。

 「律好きだ、愛してる。だ
  からそんな顔しないでよ
  …」


  律の親指が私の頬を掠め
  て初めて私が泣いてるの
  だと気付いた。








   ライムの愛情











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