けいおん

□はしゃぎまわる
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はやく、はやく。珍しくはしゃぎ
回る澪に引っ張られて人混みの間
をするすると抜けていく。本当に
楽しいんだなと実感出来るのは澪
の背中を見れば一目瞭然だ。ここ
だよ、ここ。気付けば蒼然とした
場所に着いた。一際高くて、静寂
過ぎるそこには人っ子一人いなか
った。            

「ここから見えるんだ」     

木と木の間にあるその空間に指を
指しながら近付く澪を追うように
着いて行く。腕時計を見て驚く、
もう始まるではないか。澪が楽し
みにしているように私だってこの
日を楽しみにしていたのだ。去年
約束した"また一緒に"を今年も実
行出来てるんだから、去年だけで
はない。出会った年からずっとだ
。ずっと、ずっと、「律…」、ボー
ッと突っ立っていた私に澪は座り
ながら隣をポンポンと叩いた。 

「律、もうすぐだ」       
「そうだな、」         
「林檎飴食べたい」       
「私はかき氷食べたい」     


じゃぁ、これ終わったら行こうぜ
。なんて微笑みながら返せば大き
な音が響き渡り、澪の顔が光りに
照らされてよく見えた。    

「…びっくりした」       
「律、始まった始まった」    

赤、青、黄、緑、瞬間的に夜空に
開く色は鮮明に私の瞳に吸い込ま
れた。綺麗だ。この花火も、花火
の光りに照らされた澪の横顔も。
気付けば誓うようにきつくきつく
、指を絡めて手を繋ぎ合わせてい
た。             


来年もまた二人でと、     




そうしてはしゃぎまわる









20100803













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