けいおん

□欲しいモノねだり
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私の目の前にある、髪に手を伸ばしてみた。あ、サラサラ。手触り最高。しかも艶があるし、何気に一本一本が細い。指の隙間を通り抜ける髪を優しく握り口元に持っていけばフワッと香るシャンプーの匂い。美味しそうだから食べたい、呟いて黒い束に口づけを落として首元に顔を埋めた。すると今まで背を向けていた澪が擽ったそう身じろいだ。


「律、」
「んー?」
「擽ったいぞ」
「んー…眠い」

会話になってない、愚痴を零しながらも私の好きなようにしてくれる澪はやっぱり優しいと思う。良い匂い。本当に酔ってしまうそうになる。柔らかい髪が鼻を擽って……あー、そうか。と嬉しくてしかたなくなった。埋めたままクスクス笑うとまた、「律、擽ったい」と不満な声が妙に低くて少しドキッとした。あれ、機嫌悪い?まーいいか。嫌なら引き離すもんな。

「そこで、話すなぁー」
「ふははは」
「なんだよ、もー」

いやーね、もうわかってることなんだけどさ、

「私、澪に酔ってるわ」



急におとなしくなったことに頬がにやける。あー幸せだよ。「澪?」そう呼んで覗きこもうとしたら「見るな」だってさ。そんなの無理な話だけど、

静止されても覗き込んで、澪を凝視した。

「真っ赤…」
「う、うるさいっ」

律が悪いんだ。バカバカ。アホー。傍にあったクッションに顔を埋めて紅潮する頬を隠した。

「潤んでるよ」

そう言えば今度は顔全体を隠してしまった。虐めすぎたかな。少し反省するも、やっぱ何時もやりすぎてしまうのだ。だって反応が可愛いんだもん。これで虐めないのが逆におかしいでしょ?

「みーおー、大好き」
「っ、私も…好き」

あーーー。今のやばいよ澪しゃん。そんな真っ赤な頬に潤んだ瞳で掠れた声を響かせないでよ。一時、心臓が爆発的に跳ねて直ぐに息苦しくなって、いつの間にか私は澪を抱きしめていて、この幸せが続けばいいなんて柄にもなく祈ったりしてみて…。







欲しいモノねだりだ






澪の全てが欲しくてしかたなかった





20100814









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