けいおん

□破壊サークル
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理由を並べる理由
何の救いにもならないと
知りながら










破壊サークル














妙にカンに障る甘ったるい声を聞
きながらも、上に跨がる女を私は
見つめた。真っ赤な舌が首筋を舐
め、瞳を隠す前髪に冷たい手が触
れた。何も感じないその動きは緩
慢で、自身がされているというの
に他人行儀に見えてしかたなかっ
た。             



こんなやり取りはしょっちゅうで
、何かと私は女に纏まりつかれて
生活を送っていた。決まった人は
いない。ただその日限りの恋人ご
っこ。いや、寧ろそこまでもいっ
てはいなくて結局は人形のように
何も感じない、何も思わない、唯
一残るは果てない虚無感。それを
また埋めようとして、過ちを犯し
、募る募る行為は今ではただ習慣
化していた。         




りつ、りつ、りつ

名前を呼ぶな、        
お前に呼ばれたくなんてない  





埋まらない、埋まることない空間
私はまた目を背く       








酷く傷付くというのに何故一人を
愛そうとするのだろうか。嫌なん
だ。誰か一人を愛するなんて、尽
くして、尽くして、どうせ裏切ら
れて、捨てられて、傷付いて。裏
切られた時の苦しみの大きさを知
っているから。それがどんなに悲
しくて痛いのか知っているから、
ただ怖いんだ。全てが、だから怖
いんだ、澪が。        
人間なて所詮愛に弱い生き物で、
それがまた滑稽で、ただの情なん
だと苦し紛れ私はそう思った。縋
るなんて出来ない、逃げたい、逃
げ出したい。         

「り、つ…んぁ」       
指の動きを早め、逃げる腰を固定
した。潤む瞳を私はただ無表情に
見下ろす。汚い、汚い。その嗚咽
も、いやらしく動く腰も、私を見
つめる熱の篭った瞳も、赤くなる
頬も全て私にとって無意味なんだ
と思う。           






あぁ、そうだね。
怖いから逃げ出した
私は臆病者なんだ








「り、つ?」         

遠くで聞こえた声は想像していた
声とは違かった。       


「ん、今日…あぁ、おかしぃ、よ
」              


黙ってくれないか?      

「ああぁん」         

めちゃくちゃに掻き回して口を塞
いだ。心の中で増幅する蟠りを八
つ当たりするようにただ愛情のな
い行為を。          








ああ、やっぱり        
残るのは虚無感だけだ     












20100818














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