わんぴーす

□不思議な島
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仲間の雄叫びを遠くで聞き止めながら上昇する意識にロビンは重い腰を上げた。幾分が寝てしまったらしい、時計を見れば先程本に没頭していた時間から一時間は寝ていたようだ。少しの頭痛に顔を歪ませ直ぐにまた元の表情を作り、目の前に迫るこじんまりとした島を横目で確認して航海士さんの隣に歩み寄った。

「おはよう、ロビン。珍しいわね、お昼寝なんて」
「昨日は徹夜だったからつい、」
まだ少々と痛む頭を抑えながらおどけてみせた。すればたまにはきちんと寝なさいよと笑って咎められた。ええ、ごめんなさいと一言返せば満足そうな顔をして両腕を伸ばし一伸び。
「さぁ、ここで休憩ね」
ロビン、買い物行こう。久しぶりの町並み探索でも考えているらしい、無邪気にそう言って胸元付近で片手を握り締めた。

「ええ、そうね。」
「服欲しいわ」
「私もたまには買わないと」
「決まりねっ」




****





港と真逆の岸に船を置いて、地面に降り立つ。久しぶりの感覚に浮遊感を覚えて足元がふらついた。
「ちょ、大丈夫?」
「地面に酔ったみたい」
「なんだそりゃ」

たどたどしく足元を確認して一歩一歩進む。ルフィは木の上に登り枝伝えにどんどん進んで行く。
それに従ってゆっくりと進む皆の後ろ姿を見れば一目瞭然だ。いつもより足が軽い、鼻歌まで歌っている。

「俺は刀が欲しい」
「俺は食材調達だ」
「俺は本が欲しい」
「飯だ。飯に決まってんだろ」

点でバラバラな要求にナミは溜息をはいた。

「はいはい、わかったわかった。ここで解散。いい?五時間後この浜に集合。わかった?」

航海士さんの言葉に承諾したと思えば我慢できない子供のように走り出し直ぐに姿が見えなくなった。私は苦笑しつつも、航海士さんの肩をトンッと叩き促した。

「走りましょう?」
「へ?」

速く。瞬間に腕を取り、引っ張ればバランスを崩し必死に足を動かしていた。
「ちょ、待って」
制止は振り切りそのまま進む。後ろを一瞥すれば満面の笑みを浮かべた航海士さんがいた。







***









「フランキー」
「あ?」
「お前行かなくていいのか?」
「俺様はこの武器を完成させるからいい。お前は?」
「俺も、船番することにした」

そうか、と短く返したフランキーを通り過ぎ甲板で仰向けにねっころがった。

「おい、寝たら船番にならねーだろ」
「いいんだよ、お前もいるし」

意味ねーっと呟くフランキーはそれ以上は何も言わずに黙々と鉄を重ね初めた。ウソップはそれを眺めた後ゆっくり双眸を閉じ、暖かい心地好い風に身を任せた。気持ちいい。カン、カン、となる金属音さえBGMに聞こえる。たまには静かな船もいいものだ。暫く立ったのち、フランキーが立ち上がったような気配を感じとるも気にも止めなかったが――おい、という一声に「ん?」と声だけ返事をしたが一向に返ってこない次の言葉に上半身を上げた。

「フランキー、どうっ――ッ…」

不自然なその光景に絶句したのは言うまでもない。先程あった白い町も、森も廃れているではないか。どうなっているんだ。隣を見遣ればこれまた自分と同様に口をあんぐりとした阿呆面が拝めた。

「なんだこりゃ」
「町はどうした?」
「おかしいだろ」

こうしてはいられない。ルフィ達はどうしているのか?どうしようもない焦燥感が身を襲いいてもたってもいられなかった。

「フランキー」
「おう」

直ぐさま船を降り先程仲間が消えていった方向へ走り出した。








***







おかしい、そう違和感を感じたのは町に入ってからだった。嘘の笑みなど直ぐにわかる。これが裏で生きてきた私の特製でもあるからだ。感情がないような表情をどっかで見たことがあった。それと同時に感じたのは危機感、脳内はその二つの負の感覚に必死に安全策を練るがどうにもこうにもその違和感がわからない以上どうすることもできない。まるで催眠にでもかかったような不信感だ。

「ナミ、ここおかしいわ」
「へ?何が」

多彩色異なる色に魅せられて次々に服を買い求める彼女に投げ掛けた疑問は尽く跳ね返された。わかるはずもない、これは直感なのだから。少なからずこの町から出た方が身のためだ。否応なしにナミの腕を取り店を出た。

「ロビン、まだ買ってない」
「また今度。ごめんなさい、」

不服そうな顔はしたものの切羽詰まる私を見てか大人しくついて走る。
「ロ、ロビン、」
突如に響く銃声にナミの悲鳴が響く。咄嗟にナミの腕をめいいっぱい引っ張り覆いかぶさるよう伏せた。転がるように荒んだ建物の壁に身を隠し息を潜めた。前方を一瞥、そしてまたもかと溜息をはいた。一瞬でも確認できる程の手数となれば彼女を連れての戦闘は少々困難を極めるだろう。

「なんで私たちって直ぐにこうなるのかしら?」
「知らないわよ。冷静に言ってないで逃げるのよ」
「そうね、それが得策だわ」

だけど、そうも行かないみたいね。呟く私を見て顔を青くさせた。「どういう意味よ、それ?」
「ほら」
指を指すその先に国民とは別に一人の黒いスーツを身に纏う男が立ちすくんでいた。瞬時にわかる。相当なてだれだと。

「ナミ、取り合えず船がある方に走って」
「ロビンは?」
「私はここで少し遊んで行くわ」「で、でも」
「長鼻君とフランキーと合流してくれないかしら?」

それがあなたの仕事よ。そう言われてしまえばもう反論は出来ない。この状況下でそうされざるおえないことをナミは知っていた。頭の良い子だから直ぐにわかるはずだ。サンジはともかく、ルフィとゾロは馬鹿だからこの違和感には気付かないかもしれない。(私にさえ気付けなかったんだからあいつらが気付いたら本当にへこむ)危機的状況の中での有効な手段など取り分け限られてくる。これが今は最善の策だと分かれば後は行動あるのみ。

「ロビン、絶対帰ってきてね」
「ええ、もちろん」

走り去る後ろ姿を確認してホッと一息付き、直ぐに険しい表情を作る。一人の方が色々と都合が良い。この何十年間だてに逃げ延びてきたわけではない。

「さてと、遊びましょうか」

ロビンは一息入れ、腕を胸元の前で交差して微笑んだ。









20100729









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