わんぴーす

□意識の高さ
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足が縺れるもののどうにか踏ん張り全力で走った。やっとのことで町を出て振り返って唖然――…。「う、そ…」
かろうじて出た言葉は否定したいという願望そのものだった。先程の華やかな町並みも、生い茂る草も森も、そうだ人さえもいない。ただの廃墟のような廃れた光景が目の前に広がっていた。

どうしよう。こんな場所にロビンを置いていってしまうなんて。後悔だけが募る、だとしても自分には任せられたことがある。むしろ違和感を感じ取ったロビンなら大丈夫だ。問題なのはあの問題児三人だ。この違和感に気付くはずないのだ。ならば尚更早く二人と合流しなければならない。

再度走り出し船を目指した。早く、早くと焦燥感に駆り立てられながら。



















****









「くそ、この森何処まで続くんだよ」

フランキーは舌打ちし悪態を付いた。隠すわけもなく苛立ちは募るばかり。それもそのはず先程から一時間近く走っているだけで一向に廃れたあの町には辿り着けないでいたのだから。

「おい、やめろ」
「無理だ」
「お、馬鹿ッ!!」

ウソップの制止は無視して右腕を掲げて手を取り、砲弾を前方に乱射すれば馬鹿でかい音に土煙りと砲弾の煙りが宙を舞った。

「どうよ?」
「乱暴過ぎるだろ…」

ウソップは呆れたように肩を落とす、がフランキーは満足げに土煙を見ていた。

「何がそんな不服なんだよ?ほら見ろ、目の前がこんなに見晴らしが……」

逃げようかと思った。寧ろ逃げたい。それは隣にいるウソップも同じなはずだ。ほら、見ろ。案の定口をこれでもかと言う程開き、顔を青くして白め剥いてんじゃねーか。

「あああああ、」
「ウソップ…」

二人は顔を見合わせて頷いた。

「「逃げよう」」
「待てやコラーッ」
「「ぎゃぁぁあああ」」









「「ぼんど、ずみばぜんでじた」」


顔は晴れ上がり服もボロボロになり、それでいて土下座までして目の前でご立腹な彼女に謝る。男のプライドもないがそんなことは今になってはどうでもいい。謝らなければもっと怖い思いをするのだ。

「本当あんた達私を殺す気?」
「いや、ぞんだごどはないです」
「「本当にずじまぜん」
「まあ、いいわ。取り合えずなんであんた達ここにいるのよ」

ナミの質問にハッと我に返る。
「ナ、ナミ。ここやばいんだ」
「そうだぜ。おかしいぞここ」
「知ってるわよ」
「へ?」
「ロビンがいち早く気付いたのよ」
「そ、そうか。流石ロビンだぜ。ってそのロビンはどうしたんだよ」

今までの事の流れを整理し全部話した。この島の異変も、ロビンが今危機的状況にいることも、ルフィ達が行方不明の上こちらも危機的状況だということも。

「よし、なら決まりだ」
「そうだな」

心配でならなかった。何か嫌な予感がする。それを拭い去るように三人は再度あの廃墟のような町を目指し走り出した。


















****










「本当にしつこいわね」

息は乱れるも足を止めることは自殺行為だった。自分と同じ悪魔の実の能力者だなんて運が悪い。私が感じ取った違和感の正体も直ぐにわかった。この能力が原因だと。人を操れる能力なんて狡いにも程がある。この能力で町の人々を操り、私達の視界まで操り幻影を見させていたのだ。

でも、どうやって私は解いた?いつ何処で私たちはその能力をかけられた?そうなればなぜ今私はその能力に当てられないのだろうか?疑問は募るばかり。脳をフル回転させ、尚且つ町中から向けられる銃口交わし交わし逃げ惑う。

ナミは無事かしら?あの二人と会えたかしら?ルフィ達は?後を絶たない心配事にも関わらず冷静に物事を進めた。心配は心配だけれども信用しているのだ。皆無事だと。


「ったく、逃げるの上手いな。さすが8000万ベリーの償金首だ」

図太く乾いた声が響く。それにより一層鋭い目つきを向けた。


「お前も悪魔の実の能力者だろ?」
「だったら何?降参でもしてくれるのかしら?」
「まさか」

なるべく情報は得なければならない。この男が饒舌で良かった。心から感謝しなければ。そうとなれば後はこちらのものだ。ゆっくりと姿を見せて対極する。
「やっぱりな」
渋るように呟く男に一つの仮説を説いた。
「その能力、能力者同士には効き目が薄い。そして私たち能力者が邪魔だから消しにきた、逃げた彼女をそのままにしたのは後の二人が来るように仕向けたこれであってるかしら?」
「おお、素晴らしい。ご名答、君は頭がいいな」
「あら、ありがとう」


ならばわかるだろ?口角を上げ不適な笑みを見せるその男の意図を理解した時は既に遅かった。背後から襲いかかる鋭い切っ先は迷うことなく振り下ろされた。土煙が舞う。どうにか反射的に横に飛びのいたはいい。しかしこの状況の悪さに顔は歪んだ。


「ニコ・ロビン。お前は死ね」

切っ先は私に向けている目の前の人物は確かに仲間なのだ。

「剣士、さん」

土煙が止み視界がクリアーになる。沈黙の中響いたのは下劣な笑い声だった。

「こんな愉快なことはない。仲間同士の殺し合い程見ていて飽きないものはない」
「悪趣味ね」
「そんな言葉さえ今に言えなくなる」


男の手が振り下ろされた同時に襲いかかる仲間に身構えた。闘うわけにもいかない、ならば関節を外そうか。そう考えていた矢先身体に巻き付いた何かに呆然とした。理解するまもなく先程の男も、剣士さんもその景色も遠退いて行く。乱暴に身体ごと落とされ、少しばかりの痛みに目尻を寄せる。視界の角に見知ったビーチサンダルが写り込み顔を上げ目の前を見れば「よう、」と笑顔で手を振る自身の船長の姿があった。

「ルフィ…」
「なんでゾロと戦ってるんだー?」
「良かった。無事で」
「俺は元気だぞ」
「そう」

安堵すれば強張った身体から自然と力が抜けた。

「ロビン、傷だらけじゃねーか。どうしたんだよ」
「そうね、話すと長くなるわ」
「んー、なら簡単に話してくれ」「取り合えずそうね、剣士さんの隣にいた男が居たでしょ?あの男が剣士さんを操ってるのよ」
「んー、ならあいつ倒せばいいんだな」
「そうよ」

そう簡単なことでもなさそうだけど。付け足したように不安を呟けば、ルフィは大丈夫だと笑った。
「俺がゾロの相手をする。あ、でもしたらサンジも操らられているのか?」
「そうね。その可能性は高いわね」
「んー困った」
「船医さんとフランキーは操られないと思うからまだ打つ手はあるわ」
「なんでだ?」
「能力者には効き目が薄いの。後フランキーは改造人間だから根拠はないけどその能力に当てられないかもしれないわ」

よし、なら大丈夫だな。何を根拠にそう言うのかはわからないけどもこの人が言うことは全てなんでもうまく行くような気がするのだ。こんなにもルフィがいるだけで安心する自分がいるのも今となっては笑ってしまう。

「ロビンはあの男頼むぞ」
「ええ、任せて」


ニシシと笑うルフィにつられるように微笑んだ。









20100729





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