わんぴーす
□偽
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「何も言わないのね」
淡々と綴られる声は何の色もない。言いたいことなら沢山ある。でも船長が決めたことに異議はない。
「ルフィが、決めたから」
「そう」
――…船長さんは愛されてるのね
ふわり、
彼女は微笑む
その横顔はなぜか悲しげだった。
異論はあった。それが当たり前、ないのが不思議。ルフィの言語にも疑った。サンジ君達は馬鹿だからしかたないとは思う。ゾロは違うみたいだけど…。
引っ掛かるのは先程の光景。会話は核心を得ていた。あれは情報を得る良い機会だった。なのに、私は壊れた人形のように足裏は地面にへばり付き、口はつぐんでしまい、なのに視線は反らせないまま立ちすくんでいるだけだった。
――…何が目的?
そう聞きたかった。それさえ分かればなんとかなると思ったからこその行動を取り、二人になるチャンスさえ伺ったというのに。
「あんな顔、卑怯だ」
何も感じない、望まない。自分が要らないような自嘲する笑みにさえ思えた。だと言うのに何かを探して回る迷子のような、そんな悲しい表情も入り混じっていた。
「意味わからないよ」
でも私は何かを得た気がしたのだ。