わんぴーす
□ANSWER
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「ごめんなさいね」
弔いの言葉程、無意味なモノはないけれども口癖となったそれは自分の罪を軽減してくれるような気がした。肉を立つ感触も、生暖かい血液も慣れてしまった、はずだったのに。そうね、あんなに好きだった血が今はそうは思わないもの。自身の手を手前に引けばグシュとなんとも言えない音と共に腕に伝う真っ赤な血が汚した。男が私の横に崩れ落ちるのを目の端に止め、その場に立つ尽くし虚ろな瞳を直線に送る。人の命は簡単に無くなる。ただ無常過ぎる命には重みがあると言うのに。
ああ、やってることと思ってることが噛み合ってないわね。
自嘲し部屋を見渡す。ゆっくり吸い込み息をはけば血の臭いが鼻を刺激した。本当に自分はスイッチが入ってしまうと見境がない。
「お迎えかしら?」
背後の気配に目を配る。ここはあなたが来るような場所ではないわ。こんな汚れた場所にあなたの澄んだ瞳も綺麗なオレンジも純粋な心も釣り合ってないのよ。
「ロビン、」
どうして来てしまったの?その言葉は直ぐに喉の奥へと飲み込んだ。意味がないもの。ナミも列記とした『仲間』なのだから。個人的な問題は仕事上押し殺すべき事柄。
「怪我、ない?」
「ええ、」
パタパタと駆け寄り私の身体を触るように確認した。「大丈夫よ」そう返せばホッとしたように笑顔になった。そうね、あなたはそうしてて欲しいわ。汚れなくていいの。
血で濡れた手をなんの躊躇もなく握るナミに苦笑しつつ私も握り返した。汚れてしまうわ――…そう言うも、やっぱりやってることと言ってることが違う。
「ロビンならいいよ」
「光栄だわ」
石段を降りる。さっきまで暗殺してた人間なのに。
「ゾロもルフィも待ってるわ。あとサンジ君が夕飯作って待ってるやよ」
「それは楽しみね、今日は皆で取れるのね」
「最近仕事立て続けだったから久しぶり」
楽観的な笑みに私もついつられてしまう。良い事だろうと思う。あなたが私の心に触れれば触れる程に、あなたが居ればそれで。
――…実に安らげる。
「まずは、お風呂ね」
「ねー、一緒に入っていい?」
「フフフ」
「ねー、いいでしょ?」
「ええ、いいわよ」
やったー。迎えに来たかいがある。
恥ずかしげもなく大声で叫んだ可愛らしいナミの頭を撫でたいけども今は止めとこう。綺麗な髪に血がついてしまう。
「早く帰ろう」
小走りで歩くナミに手を引かれ微笑んだ。
そうね、早く帰りましょう。
NSWER
(答えてくれたらそれでいいの)
20100812