わんぴーす

□極致
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「ねぇ、あなたが欲しいの」  

酷く優しい表情をするも瞳を見れ
ば一目瞭然。逃げる獲物をどんな
手を使ってでも掴まえようとして
いる刺すような瞳だ。甘ったるい
声で名を呼び促す、私はそれに刺
激されつつも真剣に視線は彼女の
瞳へ向けた。いつだっただろうか
、前にもこんなことがあったよう
な気がする。確かエニエスロビー
の件の時だったような。あの時も
逃げる私を余所に追うあなたの瞳
は忘れない。         


「ロビンも私が欲しいはず」  


何を馬鹿な。そう言いたいのに喉
の奥は焦げ付いたように乾燥し、
声を拒否する。脳を巡るすべての
感情を差し置いて、私はナミが欲
しいと叫んでいる。何故こんなに
も挑戦的なのだろうか、ぶつけら
れない私とは裏腹に直球に物事を
追求し言いのけてしまうのだから
この子は強いんだと思う。そうは
思うも脆い部分もあるわけで、こ
うして私が何も言わないとみるみ
るうちに歪む顔が痛々しい。  


「ねえ、ロビン…」      


一気に自信はなくなり頼りない声
を出した。さっきの威勢はどこへ
?こうさせているのが私なのだと
思うとどうしようもない満足感と
優越感に身体は震えた。首に回さ
れた腕と縋り付くように首元に埋
めた顔。それ以上な密接に香る柑
橘系の甘い匂い。       


「ロビン、愛してる」     



私もよ、           


耳元で囁き甘噛みをすれば快感に
身体が跳ねた。そういった仕草も
ただ私を煽るだけだというのに。
あなたがその気ならば私を恨むは
ずはないでしょ?まくし立てるよ
うに咎めれば怯えた目をした。奥
からゾクゾクとした黒い快感。私
で左右されていると思えばより一
掃増す独占的な感情。     


「もう、逃げるなんて選択ないの
よ?」            
「……ええ、わかってる」   


踏み越えた一線など今ではあんな
遠くにある。それだけで安心して
しまうほどの錯覚を刻み付けた。











20100825













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