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「なんでうちのクラスはおっさんみたいな女子しかいないのかね」
「それ言っちゃおわりでしょーがズラ君」
「ズラじゃない。かつぅぅーらだ」
「そんなことどーでもいいんだよ。前田君」
「誰?もはや誰?」


職員室の副校長の椅子に当たり前のように座っている銀時と、副校長の机の上に当たり前のようにねっころがっている桂は二人して片手に持つ湯呑みに口をつけた。はぁ、っと和む銀時は眠そうに目を擦りながら欠伸をもらす。こんなところを校長に見つかれば煩い小言と唾が飛んでくるに違いない。あの人間とは言えない白い生き物がなぜ校長を勤めているか全国のお偉いさんに聞いて回りたいものだ。



「銀時のクラスはいいだろ。あのお妙ちゃんとか月詠ちゃんとかいるし」
「あ?そんなん関係ねーだれ。生徒だぞ、から君」
「…つを抜くな。良く言うな。あの柳生の家の娘さん。……確か九兵衛ちゃんだっけか?ぞっこんではないか」

俺に背を向けて寝ているため桂の表情は見えないが皮肉めいた笑みを浮かべているに違いない。そう考えたらムカついてきた。俺は片足を掲げてその背中を蹴れば「うわっ」っと声を上げて机から落ちた。


「何をするんだ」
「あー。ごめんごめん。なんか足が痒くて」
「嘘つくな」
「いや、本当だって」



今頃必死になって勉強しているだろう九ちゃんの姿が目に浮かぶ。自習だとしても糞真面目に自習しているもっと息抜きをすればいいのにといつも思っていた。―――そのことを知ってかお妙や、神楽もちょっかいを出してどうにか邪魔をしているのだろう。あのかたっくるしい家にいるのだから少しでも学校では怠惰に生きてほしいものだ。「ところで銀時」―――桂がいきなり真面目な顔になった。なんだよ。面倒なこと言うなよ。本当やめてくれ。そういうのは。と内心思っていても、こういう時の予想は外れたことはない。それにこの話しの筋から言って言われることはもう分かっていた。



「お前は教師だ」
「わかってるよ。そんなこと」
「なら、今の段階でやめとけ」
「おいおい、いつ俺が九ちゃんが好きなんて言ったよ」
「そう見えるから言ったまでだ」


桂は壁に立てかけている時計に目を向けながらそのまま扉に向かって足を進めて行く。「もう、こんな時間か。二時間目始まるぞ」―――戸がガラガラと音を立てて開けば冷たい風が暖かい職員室の中に無断で入ってきた。その寒さに眉を寄せ目だけを動かし桂の姿を追った。




「わかっているなら俺は何もいわん」



それを最後に桂の姿は見えなくなった。





「やめれるならとっくにやめてんだよバーカ」





一人になった職員室はしーんと痛い程の沈黙で覆われ、俺はなぜかそんな沈黙が嫌で嫌でしかたなかった。







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