あざー

□喉を焦がす焦燥
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緑園の木枝に腰を落とし屋敷を見渡した。
――…異常なし。
反乱後だとしても気は抜けない。だというのに…………。
風を切る音にそっと手を掲げれば蒼刃が指先に止まり羽を畳んだ。――…ホッ、頭を撫で今度は肩に乗せればまたホッと鳴く。先程から気を紛らわせようと試みるが、失態は羞恥心を生みなんともいたたまれない。ブンブンと左右に頭を振りどうにかしてあの光景を取り除こうとしても、すればするほどに浮かび上がる光景にそっと溜息を零した。すれば、木枝に二人分の重みが加わり木がしなる。冷気を感じて、目の前の人物に目尻を吊り上げた。

「何よ、溜息なんてついちゃって」

不適な笑みを浮かべてそう言うも、佐助はプイッと目線を外しだんまりを決め込んだ。それが面白くないのかアナスタシアも眉が撥ねあがった。

「見張りをさぼったのは謝るわ、そんな怒らないでよ」

そう謝るもやはり一向にアナスタシアを瞳に入れることはない。それにやれやれと溜息を飲み込んだ。――…佐助も六郎も真面目なのよ。全く…。
少しは息抜きというものが必要ではないのか、それほど仕事熱心に幸村命といった思考でよく身体が持つなぁなどと感心さえする。
アナスタシアは目線を庭園に向け、見渡した。――平和ね。怖いぐらいに。ふと、目を細め睫毛を伏せる。皆、まだ本調子でない以上、自分に課せられることは大きい。幸村も佐助も六郎もましては才蔵もまだ傷が癒えていない。ならば軽傷の者が動くのが当たり前で、またそちらのほうが効率が良いだろう。

「佐助、少し休みなさい」
「否、何故?」
「サボったお詫びよ。それに屋敷内が手薄よ、皆傷が癒えてないわ。佐助あなたも。ここぞというときに動けなきゃ意味ないでしょ?ほら休んできなさい」

佐助は絶対に首を縦には振らない。今もなお、渋るような表情を浮かべて思案している。こうでも言わないとこの純情な彼は承諾してくれないのだ。「ほら」っと念を押せばやっとのこと、佐助の首を縦にふらした。
――少しばかりの不安に何もなければ良いのだけど…、と思い詰める。佐助の背中を見守るように見つめ、フーッと息を吐き立ち上がった。



「どうも、嫌な予感がするわ」
身を引き締めるように周りの空気がパキパキッと凍っていった。













20100816











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