学園:アナと佐助




 退屈な授業を抜け出し一番吹き抜けが良い中庭へと足を運べばそこに見知った先客が陽の光に照らされて寝そべっていた。    

 寝てるかもしれないと思いそっと足音を立てずに近付き、覗けば案の定その双眸は閉じられていた。佐助が寝ているベンチの一番端―――基、佐助の頭の隣にゆっくり腰を下ろしその穏やかな顔を見て楽しむことにした。意外と睫毛が長いとか、肌が綺麗だとか、本当に口を開かなければ美形だとか納得する部分も多々あるのに、勿体ないと私は思う。      

――― ふと、思った。    

――触れてみたい       

 佐助は何時だって警戒心の塊のような人間だ。例えば心を許す者のみ隣にいることを許可し、人間という人間に興味は皆無。言えばつまらない男の象徴のようなもの。そんな佐助の無防備な姿が眼前にあるならばやりたい放題というわけだ。           

「少しだけなら、ね」


 私の中の子供っぽさが全面に出る。まず頬に恐る恐る指先を当てた。そっと伺うが起きる気配はない。それを良いことに行為はエスカレートしていく。そのまま茶色い柔らかい髪を撫でていく。  
――ふわふわの猫っ毛     
 年相応の顔とこの無防備な姿。少なくとも可愛らしかった。すれば身じろぎ始めた佐助に慌てて手を引っ込めた。(ヤバイ…)起きたらまずい、そのまま寝てて、と願うがそれは敵わなかった。むくっと上半身起き上がらせた佐助は眠気眼で辺りをキョロキョロと伺う。半目に開かれた瞳を手で拭うように擦りながら反転させれば私と対峙するように視線が注がれた。何故かフリーズ。たっぷり三秒はあったと思う。どうしたものかと思考を巡らせていると、佐助が身体を引きずり徐々に迫ってきた。              
(ちょ、――な、なになに…) 

 迫る佐助にビビる私は呆気に取られた。目前に迫る佐助の顔、何故か非常に恥ずかしくなった私は目を逸らした。次の瞬間佐助の顔が目の前から消え「へ?」と間抜けな声を出した途端少しばかりの重みと温もりが自身の太股に感じた。             

「さ、さすけ!?」      

 動転したように思える。――え、えっと動揺を隠しきれない私を余所に太股に頭を預けた佐助はスヤスヤと再度夢の中へ。所謂、膝枕。             

 段々と冷静を取り戻した私はというとその寝顔を見ながら茶色い毛を指に巻いたり、撫でたり遊ぶ。              
(あー、何これ。ちょー可愛い。)              

 こんな動物いただろうか。というか佐助は私の事嫌いなはず。まぁ、寝ぼけてると思えば合点がいく。             

この日私は始めて佐助を可愛いと思った瞬間で始めて彼に触れた日でもあった。         




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