underground.X

□罪と罰と愚か者
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赦せなかった





あんたの言う通り、俺は



あいつ(フミヤ)に自分を重ねてたんだ




どうしようもない苦しみの中で、


先の閉ざされた暗闇の中で

それでも信じてた




いつかまた

笑える日が来るって



抱き締めてくれる日が来るって







赦せなかったんだ


俺達の未来を勝手に奪っていった大人達を

あいつらを





赦せなかったんだー…




でも、





『俺達のやっていることは復讐じゃない!!』




『今度は君が抜け出すんだ!!…君が闇に葬るのは過去の自分だ』






また、救われた



きっとあいつも







『俺は君とは違う』





あんたはどうやって



あの暗闇から、抜け出したんだろう





今でも苦しんでる筈のあんたは、





誰に救えるんだろう












「ここだと思った」

椎名を裁いた日、初めて連れて来てくれたラーメン屋“大王”。俺の好みじゃなかったけど、嬉しかった。

「味噌、大盛で」
「はい」
注文して隣に座ると伊達さんは麺を啜りながら何か言いたげに視線を漂わせた。ゴクリと飲み込み目を細める。
「…余計な事、だったかな」
「まぁね、ああいうのはさやっぱり好きな人にしてもらってこそでしょ」
「なるほどね…って、好きな人じゃ?」
「そ、あすかちゃんは好きだけどさそういう好きじゃないんだな」
「ははぁ…そいつは失敬」
「伊達さんは好きだけどね」

「味噌大盛お待ち」
「いただきまーす」

麺を啜る俺の横で、伊達さんは目をパチパチさせながら固まっている。考え込む時の癖で少し尖る唇。
(ラーメン)のびるよ、と言ってやったらまた唇が尖った(可愛いなんか摘みたい)

しばらく黙ってラーメンを食べる。やっぱり好みじゃないけど旨い。






「…ありがと」


それだけ言うと、伊達さんはまた目を細めて笑った。


ラーメン屋を出て、2人並んでぷらぷら歩いた。蒸し暑い風が髪を撫でる。
「今日伊達さん家行っていい?」
「だめ」
「…何で、つか即答かよ」
「こっちが何でだよ。家に来てどうするの」
「それは、ほら、親睦を深めたり?」
「深めたくない」
「お互いをもっと知った方が仕事もやりやすいと思うんだよね」
「知らなくてもやっていける」


…ガード堅っ(笑)


「伊達さんて彼女いないの?」
「…いませんが何か」
「奇遇だね俺も」
「それが何か」

伊達さんは相変わらず涼しい表情を浮かべて橋の向こうに視線を投げている。






「…ずっとそうやって、1人で抱えて生きていく気?」


足を止めて、後ろ姿に問い掛けた。
この頼りなげな背中に背負うには、あまりに“それ”は大きすぎるよ。







「……それが俺の罰だ」





湿った風に絡めとられ、その呟きは俺の耳には届かなかった。



end

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