underground.X

□ピンクマグマ5.5
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「冴子さんは、どうして伊達さんと別れちゃったんですか?」
「ええ?何いきなり」

隣で三杯目のビールを煽っていたあすかに突然訊かれ、冴子は目を見開いた。

やけにピッチの早いあすかはかなりいい感じに酔いが回っているらしく、目が座り始めている。冴子は苦笑しながらごまかすようにウイスキーを口に運んだ。
「もう忘れたよ、そんな昔のこと」
「でも、冴子さん本当は今でも」
「マスターおかわり」
冴子が答える気がないと解り口を尖らせるあすかに、三上はナッツの入ったグラスを差し出し目を細めた。
「どうしたのあすかちゃん、やけにご機嫌じゃない」
「あ、今日は祝杯なんで」
「祝杯?」
「ずっと追っていた強盗殺人の容疑者を逮捕したんです」
「…それってあの時効間際だった事件?」
考え事をするように黙って煙草を吹かしていた冴子が食い付いた。
「あ、はい。時効まであと5日という所でした」
「そう…捕まったんだ」
「…伊達さんが言ってました、冴子さんが警察を辞める前まで一緒に捜査してたんだって」
あすかの真っ直ぐな視線を受け、冴子は顔をしかめ煙草を挟んだ手でこめかみを掻いた。三上にはそれが冴子の照れ隠しだということを知っている。
そんな冴子に助け舟を出すように、三上は冷えたビールをあすかの前に置いた。
「おめでとう、これは俺から」
「わ、ありがとうございます♪」
「ちょっとマスター、これ以上飲ませないで下さいよ。酒癖悪いんだからこの子」
「まあまあ、いいじゃないの」
明らかに楽しんでいる三上を睨みつけ、冴子は諦めたように溜め息をつき新しい煙草に火をつけた。
「…しょうがないなぁ、じゃあこれはあたしからのお祝いだからね」


そう言って話し出した冴子に、あすかは大きな目を輝かせた。
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