underground.X

□ピンクマグマU
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「なごむ〜〜」
「凄いよね。デザインから着工まで全部自分でやってるなんてさ。この釘を使わないやり方は昔の日本の技術に影響を受けたからなんだって」
「へぇ〜、久遠くん詳しいね」

全部雑誌のインタビュー記事に載ってた事だけど、伊達さんの尊敬が籠もった視線(だろこれは、うん)を受けて破顔しそうになるのを引き締めた。
「あ、あっちのエクステリア見に行こ」
と、踏み出した足が地面に着いた瞬間、ぐらりと身体が揺れた。身体だけじゃない、地面そのものが。
「…っ、地震!?」
「伊達さん!!」
とっさに伊達さんの腕を掴んで地面に伏せる。その場に居た他の客達もそれぞれ身を固めて揺れに耐えていた。
30秒くらいで揺れは収まり何事も無かったように静寂が訪れる。
「…止まった」
「結構大きかったね。3、いや5くらいはあったかも」
「…他の人達は」
伊達さんは俺の腕から抜け出すと、会場内にいた人達に怪我人がいないか調べて回った。幸い怪我人も建物に破損もなくホッと一息つく。が、伊達さんの表情は今一つ晴れないままだった。
「どうしたの?」
「…まずいな。交通に影響が出るかもしれない」
「あ…」




結果的に伊達さんの読みは当たった。
被害は少なかったものの、鉄道の管理システムに異常がみられ神奈川方面の路線が運休になってしまったのだ。復旧はいつになるかわからない。現時点で日が沈み始めている中、日付が変わる前に帰宅できるかどうか…
携帯で交通状況を調べている伊達さんを眺めながら足の親指に力を込めた。

「…もういっそ泊まっちゃう?」
「……はぃ?何を言っているのかね君は。どうして日帰り出来る距離で一泊しなきゃいけないの」
「しょうがないじゃん電車動かないんだから」
「だから別の方法で」
「明日、朝イチで戻れば大丈夫だって。ねっ、いいじゃん偶には。とりあえず駅前のホテル行ってみようよ」
「……いいのかなぁ〜」

まだぶつぶつ言ってる伊達さんの背中を押して会場を後にした。






あんただって、気付いてた筈だよ。俺が、あんたにどういう感情を抱いてるか。
こんな事になったのは予想外だけど、



こんなチャンス、逃す訳にはいかない
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