underground.X

□D・V・P
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伊達の住むマンションはかなりの築年数を思わせる古びた外観をしていた。それでもエントランスやエレベーターなどは掃除が行き届いていて外観ほど古さを感じない。井筒に聞いた伊達の部屋の前まで来ると、少し緊張しながらインターホンを押した。

『はい』
「あ、宮城ですっ、すみません突然、あの、風邪だと聞いたので、えと、お見舞いに」
『…ああ、ちょっと待って』

(…?)
風邪のせいか、声がいつもと違うような気がする。首を傾げていると、ガチャリとドアが開いた。

「いらっしゃ〜い♪」
「…久遠さん!?」

しかし何故か扉の向こうに立っていたのはニヤニヤと笑みを浮かべる久遠だった。今日、署で合った時と同じアロハを着ている事から、久遠も仕事帰りに寄ったのだろう。それにしても、
「どうして久遠さんが…」
目が点になっているあすかの反応を楽しむように口元を緩ませていると、部屋の奥からスエットにTシャツ姿の伊達が顔を出した。
「人んちの来客に勝手に出るんじゃないよ」
「伊達さんは寝てなって。また熱上がるよ」
「もう下がったから平気だよ。宮城くん、どうしたの?よく家わかったね」
見慣れない伊達のラフな姿は少し若く見えて大学生(は言い過ぎか、大学院生くらい)に見える。まだ状況が飲み込めずボーっとしていたあすかは、ハッと口元を引き締め持参したスーパーの袋を差し出した。
「あ、あの課長に聞きました。これ良かったら食べて下さい」
「お〜、どうもありがとう」
袋の中を確認すると嬉しそうに頬を緩める伊達。その様子を横で久遠は鼻の頭を掻きながら眺めていた。
「まぁとりあえずさ、こんな所じゃなんだしあすかちゃんも中入ったら?」
「だからどうして君が主導権を握ってるの(笑)」
「そうですよ、久遠さんもお見舞いですか?」
「ん?まあね」
ニヤリと笑う久遠を遮るように伊達が一歩踏み出し、あすかに微笑みかけた。
「悪かったね。検査は陰性だったし明日は行けるから」
「…あ、はい」
そう言われてしまえば、ここを後にするしかない。あすかは一瞬、久遠に向けた視線を戻し「お大事に」とマンションを辞した。
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