Novel

□Senhorita and employee
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彼女に恋焦がれたのはいつだったのだろう?

       *  *

「おはよう御座います。
和子お嬢様」
朝。
ふ、と目が覚めると掛けられた声。
「啓斗・・・うるさい。
ウチの部屋に入るなってゆったはずやけど?」
「残念ながらお嬢様。
私の仕事なのでそれは受け入れられないといったはずですが?」
「屁理屈はええからでてってくれへん?」
「また似非関西弁をお使いになって・・・
何度言えば分かるんです?
春日部家の長女なのですから標準語を使え、と」
「ウチはアンタと違って脳の出来が悪いから何回いわれても無駄だと思うで?」
「いえ、お嬢様はやれば出来る子だと私は信じています。」
「お前にいわれたくないわアホ。」
「阿呆っていうなんてひどいですね、お嬢様は。
私は今、ものすごく傷つきました」
「お前が傷つくわけないやろ?」
「失礼な。
私だって傷つきますよ?」
「しらんわ。
とりあえず着替えるからでてけ」

ウチに声を掛けてきたのは、新藤 啓斗(シンドウ ケイト)という、ウチの使用人。
いいやつではあるんやけど、口うるさくて嫌味なヤツという印象しかない。
だって啓斗は。
口癖が『春日部家の長女なのですから〜』だからだ。
たしか、ウチの4つ上。
ウチが今高1だから、大2のはず。
それも、国立大学だ。
そんなことを言っていると悲しくなってきた。
ウチはお世辞にも頭がいいとは言えないから。
「学校めんどくさいわぁ」
それでも行かなくてはいけない。
支度しよっと。
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