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□過去
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俺は至って普通の田舎町の生まれの子供だった


両親は早くに亡くしたけど


町の人達は皆優しかった


貧しかったけれど、其処には幸福があった



でも、今は其幸福感なんて俺に求める権利なんて無くなった




―300年程前
当時、軍強化を狙っていた軍部は俺達に狙いを定めた

『実験用具』として


当時この国は貧困と失業率がとんでもない事になっていて


強制労働の大義名分の下、殆ど名前など知られていない地図上でもあってもなくても構わないような田舎町、農村を狙って



『強化人間』作成を企てたのだ


俺達はまるで道具のように扱われた


其でも皆また自分の土地を踏めると信じて過酷な実験にも耐えていた





でも……1人、また1人とどんどん人数は減っていって


とうとう生き残ったのは俺だけになってしまった




今でも鮮明に覚えている


荒っぽく軍直下の町に連れてこられて


ただ、ただ軍の連中を憎んで生きていた



返してほしい

皆を

どうしてこんな非人道的な事を平気でするのか


もっと他の道はなかったのか






そして…科学者達は幾度となく泣き明かした俺に


『素晴らしい…貴方は最高傑作です』


そう言ったのだ




今でも覚えている其言葉

其狂気の溢れた表情も






そして、俺はもっとも打ちのめされた出来事

『…何で年を取らなんだ?』


『何で死ねない?』


どんなに時が過ぎても変わらぬ外見

どんな場所を傷つけても再生してしまう傷跡





俺はただ平凡でいいから幸福な人生を送りたかった

この手に子供を抱きたい


其が夢だった




其を壊された


俺の大事なものまで奪って




其内俺はいつの間にか軍の『特攻部隊の隊員』になっていた




そして、其頃には景気も安定してきていて




軍は目立たないように志願してくる兵士達に矛先を向け始めていた







俺の憎悪はますます酷くなっていった




其でも今のような考えを持ち合わせるのには出会いと別れがあった




風間千景

元いい『適合者C』


恋人だった彼によって俺は変われた


今はもう亡き恋人





俺はあった瞬間、ああ、こいつも『強化人間』にされるだろうなって思った





案の定されたけど









其当時俺は今みたいに『総隊長』なんかになれる器じゃなかった



だって、ただ、軍を壊してくて壊してくて堪らなかっただけだったから






でも、千景は言った


『強化人間』にされた事を憎むでも、其を止められずに暴走ばっかりしている俺を罵倒する訳でもなく




『強くなれ』

其一言だった





今のままではただ軍に利用され続けるだけだと







俺ははっとして


そうだ


どうして周りを見なかったのだと



そう思えた



そして、彼と手を取り合って




偽善者と呼ばれようとも幾度となく『子供達』を見送った





そんな中で千景と恋人になる事は俺にとって幸せな一時だった







『なんか、俺の血でこんなにされて、遺伝子操作までされてんのに


懺悔よりも愛おしく思えるって変だよな』




今までは何時も己を責め立てて憎むだけだった



今でも、死にゆく『子供達』を見ると胸は痛む




其でも少しでもこの間違った方向性を正せるなら、其で未来の『子供達』が幸せになれるなら



悲しき運命を辿った『子供達』に何か捧げられるなら



幾らでも傷つく事も出来た




『…其だけお前に心境の変化があったって事であろう


最初は俺も何でこんな輩の血液等取り入れなければならないと思ったが…』


『やっぱり思ったんだ?』


俺は苦笑しながら其胸に擦り寄る





『別にいいけどね


俺も前の俺には戻りたくねぇもん』




何もしようとしなかった自分に戻りたくはなかった



『…だが…今はお前の血が流れているこの体が愛おしい』





何度となく触れた素肌








其でも彼は『完全適合者』にはなれなくて










救護所で息も絶え絶えの彼に言った



『…千景

絶対、絶対もうこんな寂しい世の中にしないって約束する』


だって千景だって口では直接言わなかったけれど



こんな傷だらけの世の中なんて見たくないって事は伝わっていたから




『…ふ…っ

其ではあの世で見ていようか』



其がこの恋人の最期だった
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