薄桜鬼NLCP

□この一振りは貴方と新選組の為に
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恋仲となって沖田組長は案外可愛らしい事が解った

例えば私の場合監察方も兼任している故に組長職が非番でも監察方の仕事がある場合が多い

『行かないでよ
嗚呼、このまま組長職だけにしちゃえば良いのに
そうすれば千鶴と一緒に沢山いられるし、君も危険な任務だって少なくなるのに』
まるで幼子の如く、そしてやはり一介の大人の雰囲気を醸し出し引き止めようとする


私は
『我侭言わないで下さい
私の仕事です、私が選んだのだから真っ当します
其れが新選組の務めでありましょう?』
と言って離れるのだが本当は新選組を支える故に沖田組長も自分も存在できる、誰も欠ける事無く生き続けられると信じたいから……

だから、どんなに危険でもどんなに辛くても私は組長も監察方も辞めるつもりは毛頭なかった


今日も昼の巡察が終わると夕暮れを待ち、忍装束に身を包み屯所を出立する

「……行っていらっしゃい」
彼はそう言って私は口付けを貰う

必ずまた会うと約束して……


勿論、ヘマなんて滅多な事ではしないからきちんと五体満足で帰ってくるのが常だ


今日も報告書を纏めて副長と局長に知らせる

その前に血だらけのこの形を如何にかせねば……
私は部屋に戻り着替えようと襖を開ける
すると、見慣れた沖田組長の姿があった

「帰ってくるかなって思って待っていたんだ
まだ帰っていないって近藤さんも土方さんも言っていたしね」

成る程、そういう事か
ホント、この人に待たれるのは嫌ではなく寧ろ幸せだと思うのは我ながら笑ってしまう

「着替えて報告書を提出したら幾らでも構って差し上げますよ」
私はそう言って血だらけの忍装束を物陰で脱いで着物に着替える


でも……
「今日は人を斬ったの?」
着替えようとした忍装束に口付けをして私に顔を上げる

「沖田組長だって人は斬るでしょう?」
何を今更……

しかし、彼は言った
「君は新選組で組長で一番人を斬ったと言われる僕よりも紅く染まった?」

「君はどうしてこんな組長でも人を斬殺なんてザラなのにもっと厳しい監察方にまで身を置くの?」

彼はずっと私の身を案じていたのだ

彼は私をずっと思っていてくれたのだ

誰よりも深く私を愛してくれている

それでも……
「私は貴方に何と言われようと監察方を辞めるつもりはありませんからね」
私はそう言って手早く着替えに取り掛かる


「それに、私は皆を支えたいのです
決して自惚れではなく、局長と副長の両方の意見を取り入れられる私がいるからこそ監察方は成り立っていると自信があります尚且つ私に組長と言う役職まで与えてくださったのですから私は新選組監察方、組長として出来うる限り働く事を望みます
其れは、沖田組長、他の皆さんの存在を繋ぎとめられると思っているからです」

私は貴方のいる、誰ひとり欠けない新選組を守りたいのだ

私は失礼しますと一礼して報告書を纏めて副長と局長の元に向かう



「副長、報告書を纏めまして持って参りました」
「入れ」
其処には局長も珍しくいた

「今回は惨忍な任務を任せて済まなかった
だが、お前がいてくれるから山崎も俺も近藤さんも安心できるんだろうな」

「これからもきっと汚い任務を遂行させるかもしれない
けれども信頼できるからだと思っていて欲しい」

副長と局長の台詞に氷の微笑と湛えられる笑みを浮かべる
「ええ、勿論ですとも
私は新選組を誰一人欠かすことは望んでいません
その為でしたら血塗られた修羅の道とて喜んで行きましょう
安心して頂ける其れが私の喜びなのですから
特に貴方方が欠けてしまっては元も子もありません
殴ってでも生きて頂きます」

私の台詞に副長が滅多に感情を表に出して笑う事がないないというのに
「そいつがおっかんぇな」

「お、としが声を立てて笑うなんて珍しいな
是は雪村君だからか?」
私はさぁと口角を左右対称に綺麗に上げてその場を一礼して立ち退く

「「総司を頼むぞ」」
と言った二人の言葉を背にして
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