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□Black and Happy Valentin
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まさか、最初に好きになった相手が男性であったなんて


想像できなかったと言ったなら…貴方はいい訳だと言うだろう


其でも俺は……


貴方を忘れる事は出来そうもない



『…悪いな、野郎に興味はねぇんだわ

大体気持ち悪いだろう?』


俺の初恋は音を立てて崩れ落ちた




ああ、自分が女性であったなら、もう少し何かが変わったのだろうか







「…幸村、もういい加減にしなって

あんたらしくないよ」


そう言って止めに入る幼馴染みの佐助に諌められても


飲めない酒を無理矢理飲んで吐き出す日々


「…俺らしいって如何いう姿だったか、もう思い出してくない

其を思い出したら…」


益々自分が彼を忘れられない




だったら……このまま溺れて消えてしまった方がいい



俺はよろよろと酒場を出てマンションに向かう



「…また、飲んじゃ駄目だからね!」


そう言って追い駆ける声


今日は佐助は仕事だから、見に来ない


「…もう、良いだろうか

生きる事がこんなに辛いなんて思わなかった」



忘れたくても忘れられない



このまま消えて失せてしまいたい




俺は家の近くの公園のベンチに腰掛けて目を閉じる














俺は只管後悔をしていた


俺は…無意識に否定していたんだと思う



男に惚れる筈等ないと



しかし…


俺は無意識にアイツと似た男女問わない容姿に肉体関係を求めるようになった






そして…偶然見つけた


この町でボロボロになって彷徨う幸村を






ベンチに腰掛けて…凍て付く素肌をしたアイツを抱き起こした


「…おい!

大丈夫か!」


全く目を覚まさないこんなに細かったかと思う位、軽い幸村を抱上げて





当てもないのに、車を走らせて


此処から近い隣町に住まう、悪友の家のドアを叩く


「…誰だ?

こんな夜中に

明日は久々のオフだぞ」


そう言って出てきたのは


中学時代からの悪友で

いきなり海外留学して医者になった長宗我部元親だった



「…おい、コイツ見られるか?」


そう言って勝手に中に入る




「…っておい!」

そう言って叫ぶが、流石は医者


直ぐに寝室を貸してくれた















見た事もない天井を見て俺は目覚めた



「…政宗殿?」

俺はいる筈のない人物を瞳に捕らえて


其人物が、俺を抱き締めた



「…目が覚めたか

良かった」


「…如何して

貴方がいるのですか?」


震える声を口付けが塞いだ


「…ん…っ」


「…1年間、お前を忘れられなかった

自分を何度懺悔したかわからねぇ」


其だけ自分を愛していると其人は言った






「…俺も貴方を忘れる事なんてできませんでした」


寝ても覚めても考えるのは政宗殿の事ばかり




次第に飲めもしない酒に溺れ、飲んでは吐くといった破滅的行動を取るようになってしまった


自分が自分でなくなってしまえば、忘れられるという根拠すらないものに縋って






「…取り込み中、失礼するぞ?」


会話の渦中に長身の男性が入ってきた



「…ったく

飲めもしねぇ酒を煽るなっての

俺いなかったら死んでたかもしれないぜ?」


「…言い忘れたな

昨日っつっても夜中だが、医者してるコイツのとこに運んだ」

「…非番が翌日でごろ寝決め込んでた俺のとこにきやがったのがお前と政宗だ

最初は女かと思ったけどな」

そう言った政宗殿のご友人という彼は、長宗我部元親殿というらしい





「…酒飲んで、あんなクソ寒い夜半に彷徨っていたら、風邪じゃすまねぇぞ?

しかも大量に飲みやがって

吐いた後じゃなかったら、もっと悪い末路が待っていただろうな」


そう言って病院の紹介状を渡される


「…俺の勤務している病院だ

1回診察に来い

お前、他にも何か持ってたら後々困るからな」


面倒見がいいのだろう、そう言って彼はリビングのあるソファでさっさと眠りにつきに行ってしまった







其から直ぐ翌日に検診を受け、禁酒を言い渡された事は致し方ない事である










「…しかし、禁酒はいわれましたが、禁煙は言われていませんでしたので」


俺は不摂生と解っていながら、煙草にライターで火を点ける



「……吸ってるイメージなかったが、お前も吸うんだな、煙草」


そう言って便乗して政宗殿も煙草を咥えて火を点けた




互いの煙が交差しては消えて行く



「…良く考え事する奴が煙草吸うって聞くんだが、幸村は何を考えているんだ?」


ふと切り出した政宗殿の言葉に


「…貴方の傍に居られて幸せだなっと考えていますよ?」

昨日までは政宗殿を忘れる為に酒も煙草もやっていた



でも、幸せを考える喫煙ならちょっとは赦させるだろうか


俺に取っては酒も煙草も苛立ちをぶつける捌け口に過ぎなかったのだから






「…そうか

其じゃ、お前も俺から離れるなんて考えられないようにしてやるよ」


 

そういって、俺は初めて政宗殿唇に触れる事が出来た



1年前の2月14日が嘘のように煙になって消えて行く気がした

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