きゅうまんだー

□病
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彼は所謂、仕事依存症(ワーカホリック)だ。太陽は東から昇り、天候は変わりやすく、偉大なる航路には記録指針が必要であり、人はいつか骨になって、白ひげは家族を大切にし、海軍は正義で、海賊は悪で、月は満ち欠けを繰り返し、天竜人には逆らってはいけない。それらと同等の確かさを持って、彼は―――タトは生粋の仕事依存症(ワーカホリック)だった。

しかもそんじょそこらのものとは訳も規模も違う。普通の症状ならば、仕事を家に持ち帰ったり他の人に任せられなかったり、仕事が好きで何が悪いと言うような感じだ。でも、タトは違う。頭ひとつ分どころか巨人族ひとり分、症状がずば抜けて酷いのだ。仕事を家に持ち帰るのも他人に任せられないのも、仕事が大好きであることも当たり前。彼は職人である。だが、それに加えて彼は仕事以外の全てが人並みに出来ないのだ。

例えば、ちょっと散歩にと出かければすぐさま迷子になる。その迷子になる前に、歩けば確実に転ぶしぶつかるし物をなくす。彼の身体から血が滲まない日はない。服だって仕事着以外はきちんとまともに着れた試しがないし、風呂に入れば必ず溺れる。溺れる以前に適温で湯を沸かしたことすらなかった。絶対にベッドから落ちずに眠れたことは一度もないようで、掃除洗濯どころか自炊も全く出来ない。卵が割れないならまだしも、買い物も満足に出来ないのだ。つまり、下手をすれば日常生活もままならない状態である。









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