オリジナル小説

□空白世界
1ページ/1ページ

おまえのことが大好きだ

でも大っ嫌い


気持ちを伝える気なんてサラサラないけどね



だからお前に一度だけ嘘をつこう
本音を言わない代わりに




計画は完璧だった


お前の目の前で車に引かれた
頭を強く打ったフリをした

入院したというフリで、お前の前から消えた




3ヶ月後、再びお前の前に現れた



そして一言
「君は誰?」


フフフ。
あん時のお前の目をむいた顔、本当におもしろかったな



そうして半年間、記憶喪失のフリをした

前と同じぐらいに親しくなった冬の終わりに、俺はこの嘘に終止符を打つための、メインイベントを実行する





「お前のことが、好きになった…」
loveの方で…と小声で呟く
目線を逸らして


「は?」
目線をお前に戻す



「何言ってんの?マジ、キモい」
顔は嫌悪感丸出し


「ははは、だよな。わり、今の忘れて?」

精一杯の笑顔で伝える
そして、お前に背を向けて歩き出す
足が震えているのは、気のせいだよ?




再び、お前の前から姿を消した




そして
セミの騒々しい鳴き声が全盛期を迎えた頃に、ふと姿を現す


「よおっ!元気?お前、3ヶ月もどこで何してたんだよ?ナナキ。」


フフフ。
こん時のお前の顔もウケた
目、見開きすぎ
俺、記憶喪失のフリしてた時、意図的にお前の下の名前呼ばなかったからな



「つーか、いつの間にピアス6個も開けたんだよ?知らねー間に3つも増やすなよ!」

あの告白をした一週間前だよな?
しかも開けたの、俺


「…いつだったかなぁ?」
そう言ってヘラッと笑った



あぁ、お前は俺を無いものにしたな
あん時の俺を



そうやってお前は無いものにするのが、得意




だから、大っ嫌いなんだ



この嘘はきっと、一生経ってもバレちゃいけない、俺だけの秘密



あの時、お前が受け入れてくれたなら、どんな風にこの嘘を打ち明けたのだろう…




まっ、所詮は想像の世界だよな?
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ