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□【戴き物】一周年記念
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俺には唯一嫌いな存在がいる
俺と同じ容姿で同じ声…
いつも“凜”って俺を呼ぶ、
俺の双子の兄、新宿 慎太郎――

「りーん」
「なんで毎回来るんだよ」

またいつもの様に大江戸線に来て、俺の前に現れるアイツ

「凜に逢いに。」
「キモチ悪い。近付くな。死んでくれ。」

アイツの語尾にハートマークが付きそうで可愛い女の子ならイチコロで落ちそうな台詞を俺は殺した
そして俺は車両の最後尾に向かって歩き出した

「凜!何処行くのさ」
「うっさい!ついてくるな!」

どうしてアイツは俺に付きまとうんだ?

何故大江戸線までやって来る?どんどん俺は苛々を積もらせた
何でなんだよ
中央線で東京さんと遊んでろよ
「りーん。」

俺の後ろで“りんりん”と叫んでいる俺と同じ顔

「りんってばー」

ウ  ザ  い  …
俺はふと足が止まってしまった
「凜?」
「なんでだよ…」
「え…?」
「なんでいつもいつも俺に付きまとうんだ!!
なんで大江戸線まで来るんだよ!中央線で東京さんでも遊んでろよ!」

遂に本音が出てしまった

「俺はアンタのそんな余裕ぶってる表情も、人の気持ちを考えてないとことか…
全部嫌いだ…!!」
「りん…」

なんで、俺とアイツは同じ顔で生まれてきたんだよ
昔からそれが嫌だった

「昔から、同じ顔だし同じ声だし…大嫌いだった。
嫌いだよ。アンタなんか嫌い…」

俺の頬に温かいものが零れた
何故俺は涙を流しているんだろう
昔からアイツは俺より出来の良い兄貴だった。
自然に比べられるようになって、俺はアイツを嫌いになった。
嫌いたかった。

「凜…」
「近付くなっ!
なんで、涙出るんだよ…」
俺は目を擦り、涙を止めようとした
だが、涙は益々零れていった
そして、俺はアイツに抱き締められた

「りん…」
「うっさい!離れろ!!」
「りん…!」
「やだ!」
「凜!凜太郎っ!!ちゃんと俺の話を聞いてくれ!」

俺を抱き締めている手が強まった

「りん…俺は、ずっと昔から凜の事が好きだった。今も愛してる。
たとえ凜が俺を嫌っていようとも、俺は凜を愛しているから。
……暫く大江戸線には来ないから…」

そう言うと、ゆっくり俺から腕を離した
そして、俺に背を向け帰ろうとしていた。
だが、足は止まったまま。
俺がアイツの裾を引っ張っていたからだ。

「りん…?」
「行かないで…」

自分で何を言っているのかもよく解らなかった。
俺は只、俯きながら頭から変換された言葉を口に出していた。
アイツは自分の裾を引っ張っている俺の手を優しく握りしめ、もう一度俺に近付いた。
今度は正面から。

「凜、こっち向いて」

俺は言われるままに涙で濡れた顔を上げた

「っ!!お前、可愛すぎ。」

そう言うと、俺の頬に口付け俺の涙を吸い取った

「凜…」
「うん…」
「俺はまた、凜に逢いに来てもいいか?」
「やだ…」
「!!っ…
じ、じゃあ、まだ俺の事嫌い?」
「多分…」
「っ!!!!……
じ、じゃあ、
これから凜に猛アタックするからな。覚悟しとけよ?」

そう言ってアイツは俺にキスをした

泣き虫コンプレックス

(君を落とすまであと少し!)

(只、“好き”って気付いてないの)
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