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□失恋から…
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それから数日、ミラクルトレインは何事もなく走っていた。
僕はまだ、六本木さんたちと上手く話す事ができなかった。
でも、ゆっくりと話しをできるように努力をしてみよう心に決め、皆がいてるだろう車両に移動した。
次の車両に移動しようと思ったときに、話し声が聞こえた。

「そうか。六本木は月島に相談していたのか…。」
「はい。やっぱり同期なんで話しやすくて…あの、都庁さんは誰かに相談とか…?」
「あ、あぁ。新宿にな…。」

その言葉を聞いた瞬間、心の中が真っ黒になった。

――…なんで、新宿さんが…、僕の気持ち知ってるはずなのに…。

そういう思いが胸の中で渦巻いていると、肩に誰かの手が乗せられた。

「お前、こんな所で何やってんの?」
「新、宿さん…。」

誰か―それは新宿さんだった。

「…新宿さん、ちょっと来て…。」
「え、ちょっ…おい。」

否応なしに新宿さんの腕を掴み、後ろの車両へ移動していった。
そこで僕は信じられないくらい新宿さんに文句を言った。

どうして、都庁さんの相談に乗ったの?僕の気持ち知ってたんじゃないの?どうして?どうして!?

服のシワができるぐらい、力強く服を握って新宿さんを問いただした。
新宿さんは何も答えなかった。

ただ、新宿さんの顔を見るとすごく辛そうな表情をして下を向いていた。
僕はそれを見て、冷静になった。

――そうだよね…、新宿さんの方が辛いよね。自分の好きな人から相談されたんだから…。

「あ…、ごめん。新宿さん…、新宿さんの方が辛いのに…。」
「っ…。」
「本当にごめん!」

そういって逃げるように車両を出ようとした。

「待て!!」

出て行こうと足をドアに向けた瞬間、後ろから抱きしめられた。
自分に何が起こってるのかが理解できない。

「何を勘違いしてるのかわかんねえけど、俺が好きなのは…汐留なんだよ…。」

え…。今、なんて…?

聞き返そうと振り向こうとしたが、新宿さんに強く抱きしめられていてできなかった。
けど、その腕は微かに震えていて。

「新宿、さん?」

そう呼びかけるが、返事がなかった。
少しすると、ゆっくり新宿さんは僕から離れていった。

「新宿さん…どういう」
「俺は後ろの車両に行くけど、絶対来るなよ。」
「新宿さん!」

顔を見せず、新宿さんは一番奥の車両まで行ってしまった。

静かに泣いている新宿さんを知らずに、僕は一人この場所に佇んでいた。
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