他作

□愛故の殺人は美しい!
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目の前の、血と肉と骨で構成された残骸を見ると、自然と笑みが溢れた。真っ赤な真っ赤な血液に沈んだ、真っ青で真っ白な虚ろな頭。まるで人形みたいだ。捨てられた、可哀想な、人形みたいなのだ。首は奇妙に捻れ、両腕両足は不自然に折られ、合計20本の指は全曲がる筈のない方向へとお辞儀。瞳は空を見ているどころか、何も見ちゃいない。口から垂れ流しの涎だか血だか胃液だかは、正直不快だ、汚らしい。青の軍服は、原型を留めてすらいない。肢体に覆い被さっても、いない。乗っている、が正しいくらいだ。存在価値、存在意義、どちらも失った軍服は、第三者としては醜く映る。これだけでも気色悪いのに、自分はこの死体の体液(というか血)をシャワーのように浴びてしまっているのだ。嗚呼、気味が悪い。胸糞悪い。なんで錬金術を使わずにこんな男を殺したんでしたっけ。こんな男、術を使えば文字通り一瞬なんですけどね。なんででしたっけ。あ、私の上司の陰口を叩いたからでしたね。ついで、私の事も散々言ってましたけど、そんなのはどうでも良いんですよ。「何故あの女はキンブリーなんかを部下にしてるんだか。キンブリーも、あれくらいの女なら犯して殺しゃ良いんじゃねぇか。ああいう女こそ、組み敷いたら婬乱だろうな。」思い出したら、また腹が立ってきましたね。既にぐちゃぐちゃになったであろう男の脳味噌に銃弾を埋めてやる。反動で、のたうちまわるように死体は動いた。それがなんだか面白いくらいに卑猥で、嗤えてきた。もう1発、もう1発。跳ねる跳ねる死体、血、体液、諸々。次第にそれにも飽きて。腐った頭蓋骨でも踏みつけてやろうか、と思ったが、これ以上身なりを崩したくはないので、我慢。後は、どうやって痛めようか。やはり、爆発させてしまうのが美しいでしょうね(この男の内面がいかに腐っていたとしても、だ)既に乾ききって茶色く変色した、自分の掌の血に、軽蔑の気持ちを抱きつつ。右の掌、左の掌、を、ゆっくりゆっくり合わせて、汚らわしい肢体、死体に嫌嫌だが、触れたのだ。





(キンブリー、どうしたんだ、その血!)(あぁ、触らない方が良いですよ、汚れてしまいますから)貴方だけは、汚せない私は、愚か者ですよ。

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