短編

□又、来る
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「お前……また来たのか」
「うん、暇だから、ね」



それに
此処は都会らしさが無くて、心地が良い

排気ガスに汚された水は無く、
空も汚れず真っ青で、入道雲は真っ白
紙やトイペ(トイレットパーパーの略)に使われる木々は、まだまだ無事
空気は綺麗だし、
地球温暖化にもかかわらず、少しひんやりしていて過ごしやすい

そして、
この人(あれ? 人か?)が居ると
面白いし、楽しい



「親に、怒られんじゃねーの?」
「うん、後から どうにでも埋め合わせするし」
「大丈夫なのか?」
「多分、」



緑だし
頭に皿は乗っけてるし
なんか蹼ついてるし
やたらと舌長いし
瓶底眼鏡だし
たまに説教し出すし
ほとんど湖の中に入ってるし(現に今だって)
河童だし(あ、言っちゃった)

まぁ、
そんなこんなで
この人(あれ? 人か? って2回目?)は面白い



「で、この前の続き、聞かせてほしいなー」
「おう、何処まで話したか……」
「おっさんが胡瓜盗んだ所まで」
「おっさんじゃない、海老名さんと呼べ!」
「はいはい、海老名さんが胡瓜盗んだ所までです」
「はい、は1回と親に習わなかったか?」
「親なんかと喋ったこと無いよ、必要最低限のこと以外ではね」
「………そうか、悪かったな」
「いや−、別に良いよ」



おっさん、と言えば、海老名さんと呼べ、と返してくるし
はい、は1回とか、人生に1度はある注意してくるし
なんでか謝ってくるし
ころころころころ、表情やら何やら変わる

まぁ、
そんなこんなで
この人(あれ? 人か? って3回目!!?)と居ると、楽しい



「で、まぁ俺ァ、胡瓜盗んだんだけどよ
 運悪く見つかっちまってな……
 やっぱり俺は人間にとっちゃ化け物だからな……
 追いかけられちまってよ」
「捕まった?」
「いや、なんとか逃げ切った」
「そーかー」



ま、水中であんだけ早く動けるのだから
陸上では、大分速いのだろうな

……なんとか逃げ切った、ってあたり
ぎりぎりだったのかもしれないけども



「………」
「どうかしたか?」
「うん、……やっぱり此処、良いなー、って思っただけ」
「だろ?
 初めて此処に来た時は、そうさな……
 道端に落ちてた当選してるロト6拾ったかんじだったな」
「分かりやすそうで分かりにくいよ、おっさん」
「海老名さんと呼べぇぇええ!!!!!」



長い舌が私の方へ伸びてくる
間一髪で避ける

舐められたら
絶対鳥肌たちそう……





―――遠くで……
遠くで、聞き慣れた声がする
多分、私の家の女中だ

ばれたかな、居場所



「お前、呼ばれてんじゃ…」
「うん、帰りたくない」
「矛盾してねーか?」
「してる、けど、帰りたくない」
「…」



矛盾、ってより
我が儘、だけど

こんなだから
世の人は、お嬢様は我が儘、なんてイメージがつくのかもしれない
否定はしない、けどねぇ



「海老名さん、」
「あー?」
「駆け落ちでもしてみようかな」
「…誰と、
 好きな奴でも居るのか? それとも許嫁か?」
「誰だって良いのよ、好きな人だったら
 友達でも、恋仲の人でも」



そう
それが
人、ではなく、天人、だとしても



「海老名さん、」
「今度は何だ?」
「私と、かけ―――」



「お嬢様!!!」



ざぷんっ、

小さく音がして
海老名さんは湖の中に入ってしまった
やっぱり、人と距離を置いてるんだね

此処に居るのは
私と、此の女中だけ



「何をなさっているのです!
 此処に来てはいけないと何度も申しておりますのに……」
「どうして、理由はあるの?」
「此処には天人が住んでいると聞きます
 お嬢様に危害が及ぶといけないと、皆が言っております
 それに、お嬢様のお父上も―――」
「嘘っっ」



あんな男が、そんなこと言うわけがない
あんなの、父親でも何でもない
どうせ、私を邪魔者としか思っていないくせに
そんなこと、私を心配などするわけがない



「貴方達だってそう!
 一見、私を心配しているように見えるけど、
 其れだって偽ってるものだ!!!
 彼の男に気に入られたいが為にそうしてるだけ!!
 最終的には自分の出世なんでしょ!!!」
「其れは違います!
 早く! 帰りますよ!!」



なら、
何故そんな無気になる
どうせ、この人達も、我が身が可愛いんだ



女中に引きずられるようにして帰る

湖を見やれば
少しだけ顔を出す海老名さん
此の女中達なんかより、
海老名さんの方が私を心配してくれているようだ






又、
口パクで伝えたら
楽しみにしてる、と口パクで返してくれた
―――楽しみ、に…
ちょっと期待してみようか


END

何を思ったのか、海老名さん
あの……単に海老名さんの声やってた、うえだゆうじさんが好きなだけです
でも、海老名さん嫌いじゃないんです
もう、意味分からんし、ぐだぐだー(*´∀`)


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