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□放課後アダージョ《番外編》
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柳瀬ママは終始笑顔で、食事が始まっても楽しそうに話している。柳瀬パパもそれに相槌を打ちながら、話を聞いていた。
少しだけ、柳瀬が羨ましい。海外暮らしの長い両親とはもうずっと会ってない。それが当たり前になったし、電話ならしている。慣れたって思っていた。
でもこの後、あの家に帰るのは少し寂しい。

「どんどん食べてね」

小皿に取り分けてくれる柳瀬ママにお礼を言いながら私はそれを口に運ぶ。
柳瀬は無言で食べていたけど、私が黙っているのを見て首を傾げた。

「…それ食べたら帰る?」
「うん」

さすがに一回帰っておかないと。時間的にお母さんやお父さんから連絡が来ると思うし。そう言ったら柳瀬は一言「送る」と言った。
柳瀬が何を考えてるのかが分かって私は苦笑する。そんなに気にしなくても大丈夫なのに。
柳瀬は私が家に一人なのを気にしてるのだ。でも今日はやっぱり家族で過ごして欲しいから。

「大丈夫だよ?一人で」
「いいから…俺がそうしたいの」

きっぱり言われた言葉に咄嗟に反応できない。柳瀬はそれだけ言って黒豆も口に運んだ。
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