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□放課後アダージョ《番外編》
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歩いていたらあっという間に家に着いて、少しだけ名残惜しくなる。やっぱり、誰も居ない家は寂しい。
家の鍵を開けてからお礼を言わなきゃ、と思って柳瀬を振り返った。柳瀬はなぜか不機嫌そう。

「寂しい?」
「え?」
「顔に書いてある」

心の中のぼやきを当てられて驚けば、柳瀬が私の頬を両手で包み込む。私ってそんなに分かりやすいかな。
柳瀬は私の頬を包み込んでから触れ合うだけのキスをする。柔らかな触れ合いに、私は笑った。

「…何かあったら、」
「ん?」
「すぐに呼ぶから、柳瀬を」

私の言葉に柳瀬は目を丸くしたあと笑って私を抱き締めた。「帰らない」「え?」「まだ亜季と居る」それだけ呟いて柳瀬は私を抱え上げた。そのまま家に上がっていく。
そのまま私の部屋に入ってベッドに私を降ろすと柳瀬も乗り上がってきた。「やなっ!」ビックリして体を起こそうとするけど、柳瀬が肩を押さえてまたキスをするからそれも出来ない。
ようやく離れた時は息切れするくらいに酸欠だった。柳瀬は上着を脱ぐとベッドの下に落とす。

「や、やなせ…?」
「なに?」

なにって言わす気ですか?私は口を閉じたり開いたりしてたけど、結局何も聞けず口を閉じる。それを見て柳瀬が微かに笑う。

「亜季、」
「なに…?」
「好きだよ」
「……うん」

頷く私に優しくキスをしてくれる。背中を撫でる柳瀬の手が心地よい。布越しに感じる柳瀬の温もりに安心した。いつの間にか、こんなにも柳瀬を近くに感じてる。
速くなる心臓とは別に、柳瀬の背中に手を回す自分にしながら私は目を閉じた。
唇に柳瀬の吐息を感じながら。








―END―
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