CLAP Novel

□HAPPY CHRISTMAS
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◇HAPPY CHRISTMAS◇




12月24日。
世間はまさにクリスマス一色ですよ。街なんかサンタで溢れかえってますよ。恋人同士の幸せそうな顔といったら!!
そんな輝く街をあたしはただ一人、部屋で見下ろしていた。それはもう見事なぶっちょう面で。
理由は簡単。あたしがあの輝く街の仲間入りを果たせなかったからだ。

「真綾、悪かったって」
「いいです。期待なんかしてなかったですから」

嘘だ。その証拠にあたしの機嫌は最低最悪。電話の向こうで彼方の溜め息が聞こえるが、今のあたしにはたいしたダメージにもならない。
彼方と付き合って半年。大きなイベントになるはずだった今年のクリスマス。もちろん楽しみにしないはずがない。
それなのに。なのに……!

[悪い。23日から出張が入った]

突然の呼び出しで言われた一言。目の前で両手を合わせる彼方の姿。悲しみとか怒りとかそんなのはいっこうに沸いてこなくて。
ただ、あたしは呆然とその言葉を受け止めた。

「…まだ怒ってんの?」 「………」

あたしは返事をしない。怒ってる、と言えば角が立つし怒ってないとは嘘がつけなかった。怒ってるのは事実だし。
彼方は沈黙を肯定と受け取ったらしく、また溜め息をついた。
なによ、そんなに溜め息をつくなんて。あたしとはクリスマスを過ごしたくなかってこと!?……あたし一人でこんなに怒って馬鹿みたいじゃない。

「…もう、怒ってない」

呟くように言えばまた溜め息。怒っていても許していても結局は溜め息をつくんじゃないの。
もう知らない、と完全にやさぐれた気持ちで電話の向こうの彼方の言葉を待つ。どうしたって彼方はあたしには会いに来ない。というか簡単に来れる距離に居ない。

「…………わかった」
「え?」

長い沈黙を破って呟いた声にあたしの意識が浮上する。電話の向こうで彼方が前髪をガシガシやっているのが分かった。あたしが見つけた、彼方の癖。

「明日は午前で商談が終わるから新幹線飛び乗って帰る。そしたら17時には駅に着くはずだから、ケーキでも買って俺ん家に行こう」

あたしは彼方の提案に目を丸くさせた。返事の無いあたしに彼方が駄目?と聞いてきたので少し我が儘を言ってみる。

「…ちょっぴりデートするのは無し?」

呟いた言葉に彼方が苦笑する気配が伝わった。それでもいいよ、と言ってくれる。
あたしは単純だ。もう明日が楽しみで仕方ないのだから。



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