CLAP Novel

□放課後アダージョ《番外編》
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放課後アダージョ《番外編》


「今日の放課後は緑化委員会の集まりがあるかなぁー。委員は忘れずに行けよ」

担任がホームルームの最後に言った言葉に俺は思わず呻く。その声を聞いて前の席の男子が「お前、緑化委員だっけ?」と聞いてきた。緑化委員だから呻いてるんだって。
押し付けられるようになってしまった緑化委員。正直、担任に言われる今まで自分が緑化委員だと言うのを忘れていた。

「集まる教室どこだっけ?」
「1ー3だって」

教えてくれた男子にお礼を言って立ち上がる。今すぐ行っても早すぎて誰も居ないだろうけど、することもないし。
俺は鞄を持って廊下に出た。1ー3は既に誰も居なかった。――否、一人だけ居た。窓際の前から三番目の席に髪の長い女子が。
彼女も俺に気がついたのか後ろを振り返った。無意味に俺は焦る。

「緑化委員の人?」
「そう」
「何組?」
「4」

答えたら「じゃあ私の後ろだ」と言った。怪訝そうな顔をしたら黒板を指差される。
なるほど。窓際から一年・二年ってなってんのか。俺は大人しく彼女の後ろに座った。微かにシャンプーの香りがする。
することもないから前に座る彼女を見る。彼女は机の横にかかっていた鞄を探ると中からキャラメルを出す。甘そうなそれに思わず苦笑した。
歳の離れた姉さんもキャラメルが好きでよく食べてる。俺はあんまりだけど。
俺があんまりじっくり見てるからか、彼女が振り返る。目が合って妙に緊張する。

「あげる」
「え?」

差し出された手を見ればキャラメルが一個あった。俺はそれを貰って口に含む。甘い味が口いっぱいに広がった。

「あっま」

思わず呟いた言葉に彼女は笑う。彼女はキャラメルをなめながら「大好きなんだ」と呟いた。言われた言葉に心臓が跳ねる。や、別に俺が好きって言われたわけじゃないけど。
なんとなく、顔を見上げて俺は固まる。こっちを向いた彼女が凄く嬉しそうに彼女が笑っていたから。思わぬ笑顔に俺は焦る。それからその笑顔が目に焼き付いてしまった。
委員会の出欠で名字が「柳川」だと知った。俺の名字と似てるし。でもそれ以来、接点らしい接点もなくて。だから二年に上がった時名簿に「柳川」という名字を見つけて驚いた。その時に名前も知った。
俺は一年の時から彼女を知ってたけど彼女は二年の9月に初めて会話したと思ってる。
それを訂正するつもりはないけど。彼女に初めて「柳瀬」と呼ばれた時、なぜか泣きそうになった。







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