Long Novel

□角砂糖恋愛
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駅前の商業ビルに大きなポスターが貼り出されている。そこには見知った顔が私を見下ろしていた。

「ついにあそこに出現したか」
「真波ちゃん、」
「お待たせ。待った?」

背後から聞こえた声に振り返れば、息を切らせている真波ちゃんを見つけた。走ってきたらしい。

「そんなに急がなくても良かったのに。待ち合わせ時間を過ぎてないよ」
「莉子は絶対に早く来ると思ったから。寒い中待たせたら怒られる」

誰に怒られるのか、それがすぐに分かって私は笑う。怒らないと思うけどなぁ、と言ったら「莉子は分かってないね、あいつのことを」怖い顔で叱られた。
私はぼんやりとポスターを見上げる。化粧品を持って映る彼は、男の人なのに危うい美しさを持っていた。
少し前なら遠いな、と思っていた。今は会えない時間が寂しくて仕方がない。

「――さて、買い物に行こうか?」
「うん。付き合わせちゃってごめんね」
「いいよ! 私も買い物したかったしね」

そう言って真波ちゃんは後ろに建っているデパートに入る。私ももう一度、背後のポスターを見上げると真波ちゃんの後を追いかけた。
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