Long Novel

□電波的恋愛事情
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電車の揺れが心地好い。寝不足な体にはいい具合に眠気が襲ってくる。私はついつい出てしまった欠伸を手で隠しながら、次の駅で降りる準備をする。
今日はアルバイト初日だ。遅刻するわけにはいかない。私は鞄を抱えて止まった電車から降りようとして、隣を歩いていた人にぶつかってしまった。後ろから焦ったサラリーマンに押されたからだ。
私がぶつかった人は手に持っていた書類らしきものを落とした。私は慌ててそれを拾う。

「すいません!」

茶色の封筒を拾って汚れを簡単に払う。そしてそれを相手に渡そうとして、意識がぶっとびそうになった。
見上げるくらいの長身にくせっ毛の黒髪。肌は白くて恐ろしいくらいにきめ細やか。めちゃくちゃ無愛想だけど。めちゃくちゃかっこいい。


「……ども」

男の人は私から茶封筒を受けとるとさっさと歩いていってしまった。その後ろ姿を見ながらため息をつく。
良いものを見た。今日一日は素敵な気分で過ごせそうだ。
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