Long Novel

□ストイック・ラブ
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泣いているあたしの頬を優しく撫でたのは、不器用な手つきの男の子だった。その子は自分も泣きながら、ただあたしの涙を拭っていた。

『泣かないで・・・。僕がずっと一緒に居るから』

小さな体であたしを抱きしめて泣きながら囁かれた言葉に、あたしは彼を見上げた。泣き笑いのような顔であたしを見下ろす彼はただひたすらにあたしを抱きしめた。

『一人じゃないよ。僕が居る。僕があかねの側に居るから・・・』

だから泣かないで、と呟く彼の体を、あたしは力いっぱい抱きしめた。彼も力いっぱい抱きしめ返してくれる。その力強さに安心しながらあたしは泣いた。『家族になろう』と言う彼の言葉に頷きながら。



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目を開けて、頬が濡れていることに気がついた。どうやら夢を見ながら泣いてしまったらしい。夢の内容は詳しく覚えていないけど、なんとなく想像はついた。
外はうっすら明るくなったところだ。時計を見たら五時。起きるにはまだ早い。あたしは体を起こそうとして、背中に感じる違和感に気がついた。なんていうか妙に温かい。

「・・・んっ」

体を捻って背中を見れば茶色の髪が見えた。ついでに穏やかに気持ち良さそうに眠る横顔も。

「・・・・・・・・・」

完全に熟睡しきった顔のその人を見て、あたしは無言でベッドから蹴り落とす。その人は「あだっ!」と言って目を覚ました。
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