Long Novel
□僕らの内緒の秘密基地
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何が原因だったかなんて覚えてない。覚えてるのはケンカをしたこと。泣いたこと。……晴に酷いことを言ったこと。
『晴のばか! 大っキライ!』
よくある子供のケンカだったと思う。でも私は晴に大キライなんて言ったことなかった。だから言った自分が一番驚いて。
『っ、』
晴の顔を見るのが怖くなって逃げ出した。溢れる涙を何度も拭いながら走って、晴と作った秘密基地に隠れた。
どうしよう、晴に嫌われちゃった。頭の中はそんなことばっかり。キライ、なんて嘘なのに。
日が暮れても帰れなくて。暗くなっていくうちにだんだん怖くなって。どうしようもない心細さからまた泣いてしまった。
膝に目を押し付けて必死に嗚咽を噛み殺す。帰りたい。でも晴に嫌われたと思ったら、帰ることも怖かった。
『見つけた、』
そんな声が聞こえたあと、温かな腕が私を抱き締める。顔を上げればホッとしたような晴の顔。私は安心して、やっぱり泣いた。
昔からずっと晴が側に居た。私は与えられる優しさに甘えて、晴と一緒に大きくなった。