Long Novel

□コロンブスの卵
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内気で引っ込み思案でおまけに人見知り。決して多いとは言えない友人たちにべったりで、狭い交遊関係しか築けなかった。
そんな私が初めて自分で行動したのは。
ただあなたに会いたかったから。

『うちを受験すんの?』

広い大学の構内で迷子になり、受験時間も差し迫って途方に暮れていたところを助けられた。
ガチガチに緊張していた私の頭を撫で、にこりと人好きのする笑顔を浮かべる。その顔に私の緊張は少しだけほぐれた。
小さく頷く私に、顔に浮かべた笑みがますます深くなる。

『そっか。頑張んな』

そう言って帰るところだったのにわざわざ受験会場まで送ってくれて。吃りながらお礼を言う私に手を振ってくれた。

『受かったらさ、軽音部に入ってよ。お礼はそれでいいからさ』

笑いながらそんなことを言って、あなたは立ち去った。今思えば社交辞令みたいなもんだったんだろうって分かる。
でも、私には何よりも大切な「約束」になった。

内気で引っ込み思案でおまけに人見知りで。流れに身を任せるようにして生きてきた私が、初めて行動したのは。

ただもう一度、あなたに会いたかったから。
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