Short Novel

□無気力ガール
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怠惰で面倒くさがりで無気力で。泣き虫で寂しがり屋な女の子。俺はそんな彼女の、たぶん彼氏で俺たちは恋人同士のはず。たとえ甘い空気なんか微塵も無くても。

「来たんだ、和くん」
「会って一番最初に言う言葉じゃないよね、それ」

窓に一番近いベッドを占領する彼女に、俺はため息が出そうになった。白い壁に白い天井に白いカーテン。そんな白に埋もれるように菜々は居た。もうずっと。まるで番人のように。

「今日は何を持ってきたの?」
「桃。ばあちゃんがたくさん送ってくれたから」

持ってきた袋の中を見て、菜々は嬉しそうに笑った。彼氏が来るよりもお見舞い品の方が嬉しいっていうのは問題がある気がするのは俺だけか。
俺は果物ナイフで桃を切り分けた。菜々はそれを片っ端から食べていく。「・・・菜々、」「私のお見舞い品だもん」そうだけど。少しくらい遠慮しても良いんじゃない?
俺は皮をゴミ箱に捨てて果汁のついた手を洗ってくる。戻ってくる頃には桃は綺麗に消えていた。

「今日は体調は?」
「相変わらず。不便な体」

軽口が叩けるくらいなら今日は良いのだろう。不満そうに唇を尖らせる菜々の頭を、俺はなんとなく撫でた。
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