Short Novel
□シュガーレス・ナイト
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明け方。玄関から聞こえた凄まじい音にびっくりして目が覚めた。私は慌てて部屋から飛び出して玄関に向かう。
「シュウちゃん、どうし……きゃぁ!」
「ただいまぁ〜」
目の前に現れた黒い壁。それがいきなり私を抱き締めて床に押し倒した。背中を強かに打ち付けて痛い。強い酒の臭いが鼻を刺激した。
私はなんとかのし掛かる黒い物体を退かす。押しても中々退かなかったから、腹を蹴っ飛ばした。
「うっ!」
腹を蹴られたシュウちゃんは呻き声をあげながら私の横に倒れた。私は呆れながらもシュウちゃんの体を揺する。
「シュウちゃん、こんなとこで寝たら風邪ひくよ」
「………」
ダメだ。完全に爆睡している。私はシュウちゃんを起こすことを諦め、リビングまで引っ張っていくことにした。
シュウちゃんの部屋から上掛けだけ持ってきてシュウちゃんの体にかける。たぶん風邪は引かないだろう。ひいたとしても自己責任だ。
時刻は午前5時。まだもう少し眠れそうだ。私は自分の部屋に戻ろうとして「狭雪、」腕を引っ張られた。
「っ、…シュウちゃん?」
見ればシュウちゃんが私の腕を掴んでいる。シュウちゃんは私の顔を見上げて、にっこり笑って――寝た。
「………」
私はシュウちゃんを軽く蹴飛ばしてから部屋に戻った。