Short Novel

□不器用な恋心。
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 咲哉は私が好きだと言う。そんな馬鹿な、って思ったけど、咲哉の目は真剣そのものだった。笑い飛ばすことができないくらい。

「・・・・・・冗談だよね?」
「本気だよ」

 思いがけず真面目な返答に私は戸惑う。ちょっと待って。どういうこと? なんでこんなことになっちゃったんだっけ?
 最初はただ、普通に会話していただけなのに。なんで私は咲哉に告白されているのだろうか。
 私は頭の中をフル回転させて、必死に頭の中を整理しようとした。だけど咲哉はそんな私にはお構いなしにどんどん話を進めていってしまう。

「優花、僕と付き合って」
「っ、」

 ありえない言葉に、一瞬脳内が真っ白になった。「な、なななな」壊れたラジオみたいになった私は、馬鹿みたいに口をパクパクさせながら、ただ呆然と咲哉を見つめる。
 どうしよう。咲哉は本気だ。とにかく止めなくちゃ。・・・・・・でもどうやって?
 焦った思考回路は空回りを続けて、全く意味のないことばかりが頭の中を駆け巡る。その間にも、私と咲哉との距離は咲哉によって縮められていた。

「優花・・・・・・」

 ひぃーっ! 咲哉の手が私の肩に! まずい! このままじゃあ色々とまずい!
 力強く抱きしめられて、咲哉の顔が近づいてきた。この後に何が起こるかなんて、私にだって想像できる。
 私はとにかく考えて。考え抜いた末に、口から出てきた言葉は。

「わ、たし他に好きな人が居るから!」

 咲哉はピタリと動きを止めた。
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