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□猫とマタタビ《番外編》
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彼は私を見つける天才だ。
「あー! こんなとこに居た!」
弾んだ声に顔を上げれば派手な金髪が目に飛び込んできた。しまった。もう見つかったか。
藤峰くんは鋭い眼差しでこっちを睨みながら猛然と歩いてくる。怒っているのは間違いない。
「なんで何も言わないで行っちゃったんだよ!」
「……ごめん」
別に藤峰くんと約束なんてしてないんだけど、それを言ったらまた騒がしいことになりそうだから黙っておく。
広げたお弁当をはじっこに寄せてスペースを開けたら嬉しそうに隣に座った。大量の菓子パンが入った袋を膝に置く。
「もしかして最近はずっとここで食べてた?」
「……うん」
「言えよ。超探したじゃん」
頬を膨らませる藤峰くん曖昧に笑って話を流す。一緒に居たくなかった、と言ったらどうなるのだろうか。
「いいんちょー、今日一緒に帰ろうよ」
「今日は無理」
なんでだよ、という目で見られるから無言で一枚の紙を見せた。藤峰くんの目が真ん丸になる。
「しんろちょうさしょ?」
「そっ。その話をするから先に帰って」
素っ気ない私の言葉に頬を膨らませる藤峰くん。そんなことには構わず、私は食べ終えたお弁当を片付けて読み途中の文庫本を広げた。