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□恋ときどき、嵐。
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朝から鳴いている蝉の音が、あたしの思考回路をぐちゃぐちゃにする。
惚れた弱味ってやつなのかもしれない。じゃなきゃ会う度に意地悪ばっかり言う奴なんか、とっくに嫌いになるはずだ。それが出来ないのはやっぱりあたしは奴のことが好きだってことで、嫌われたくないって思ってるのも事実で。
悔しいけど顔は良い。頭も良い。運動もできる。人当たりも悪くない。……あれ、悪いところがない?や、でもあたしには意地悪だし!

「…何一人で百面相してるの?」
「わぁっ!?」

変な一人会議(妄想とも呼ぶ)を繰り広げていたら、首筋に何かを当てられた。見れば缶ジュース。振り返れば右手に缶ジュースを持った兄の姿。

「ちょっ、脅かさないでよ!」
「ジュースいるか?って言ったらうん、って言ったのはお前だろ。一人でぶつぶつ何言ってたんだ?」

その言葉にあたしは驚く。ホントですか?そんなこと、一言も言った覚えないんですが。それも聞こえないくらい奴のこと考えてたってことですか。あたしは病気じゃないでしょうか、かなり重度の。
蝉の音が忙しなく響く。あたしの頭は暑さにやられたのかも。そんなことを暢気に考えていたら兄・祥平がいきなり爆弾を投下した。もちろんあたしに。

「あ、今日祐貴が遊びに来るから」
「っえぇ!?」

驚きすぎてあたしは缶ジュースを足に落とした。くそぅ、めちゃくちゃ痛いじゃないか。
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