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□嘘つきな愛の詩
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4月1日。
それは人が嘘を言っても許される日。だけど私にとっては唯一、あなたに真実を語れる日だ。

「今年は店を閉めてから夜桜を肴に花見らしいですよ」
「聞いたよー。店長が張り切ってたもん」

荷物を抱えて隣を歩くアオを見て言えば、アオが苦笑した。口の端を緩めるその笑顔に私の心臓が微かに跳ねた。何度、この笑顔を好きだと思っただろうか。

アオは私の高校の吹奏楽部の後輩だ。今はお互いに違う大学に進学している。そんなアオと今もこんな風に仲良くできるのは、バイト先が同じことが大きいだろう。

「アオもこのバイト長いよね」
「先輩こそ。俺よりずっと長いじゃないですか」

その言葉に私は小さく苦笑した。知ってる? アオがここのバイトを続けてるから私も辞められないんだよ。だってここを辞めたら私はアオに会う理由がなくなっちゃうもん。
ここのバイトを紹介したのは私だ。人手が足りなくて、ちょうどアオがバイトを探してるって聞いたからちょうどいいかなって思ったんだ。
学校の外でもアオに会えるって思ったから。そんな下心を隠しながら、私はアオにバイトを紹介した。それからこんな微妙な距離をずっと縮められないでいる。
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