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□シュガーレス・ゲーム
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――気まぐれを起こしたのがいけなかったのか。

暇だったからシュウちゃんのお店に遊びに行こう、と私は開店前のお店に向かった。前に教えられた通りに裏から入ろうとして、キスする男女を見つけて固まる。
私は咄嗟に物陰に隠れようとして「っ、シュウ…!」聞こえた声に思わず背後を振り返った。口づけを交わす男女。女の腕は男の首に絡んで、きつく抱き締めていた。

「お願い、抱き締めて…」

切ない声が響く。その人はもう一度、抱き着いている男の人に顔を近づける。その瞬間、影になっていた相手の男の人の顔が光に当たって私にも見えた。

「シュウちゃん…」

私の呟きが聞こえたのか、男女が私の方を振り向く。女の人は知らなかった。だけど抱きつかれてる男の人は私のよく知る人で。
目を見開いたシュウちゃんは私をジッと見つめてくる。その唇はほのかに桜色に染まっていて。

「っ、」
「狭雪!」

私は二人から目を逸らすと表通りに向かって走り出した。後ろでシュウちゃんの焦ったような声が聞こえたけど、私は立ち止まらなかった。

気まぐれを起こしたのがいけなかったんだ。シュウちゃんだって言ってじゃない。お店に来ちゃダメだって。
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