CLAP Novel

□君のトナリ
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食い入るようにテレビ画面を見る美砂を、俺は見つめる。
映画が嫌いって訳じゃない。むしろ好き。洋画でも邦画でも。
でも、せっかく彼女と二人っきりなんだから甘い時間を過ごしたいと思うのは仕方が無いじゃないか。

「美砂」
「え?」

美砂が俺を見上げる。
俺はソファの上に乗っていて美砂は下の絨毯の上。
俺は美砂に向かって手を伸ばす。

「おいで」

美砂はきょとんとした後、俺の隣に座った。
俺は苦笑して美砂の腰を攫った。

「きゃっ!?」

美砂は慌てて俺にしがみついてきた。俺はそのまま美砂を俺の膝の上に乗せた。

「ここ」

にっこり笑うと美砂は顔を赤くさせる。
本当にかわいらしい反応ばっかり返してくれる。

「愁って意外と強引だったんだね・・・」

美砂が呆れたようにボソボソと言ったから俺はニヤリと笑った。
そのまま美砂の前髪を分けて耳にかける。

「そうだよ。嫌いになる?」

俺は何気なく聞いてみた。本当は心臓は爆発しそうだったけど。
美砂は俺と居ること、どう思っているのか不安だったから。

「ううん。嫌いにならない」

美砂は照れながらもしっかり言ってくれた。
俺はその一言で一気に舞い上がる。
思わず美砂の額にキスをすると美砂は一瞬呆けて、顔を真っ赤にさせた。
その姿を見つめながら俺は意地悪な質問をする。

「じゃあ好き?」

俺が聞くと美砂が小さく頷く。
そんなんじゃ嫌だ。ちゃんと声で表してくれなきゃ。
俺が見つめていると美砂は諦めたように上目遣いで俺を見上げた。

「・・・好きだよ」

俺はそれこそ満面の笑みを浮かべていたと思う。
そのまま美砂の唇に自分の唇を重ねた。
美砂は最初は身を硬くさせたが、すぐに俺に答えてくれる。

「俺も好き」

うん、って小さく返事をする美砂がとてと愛しい。
なんだ。ちゃんと恋人になれてるじゃないか。
美砂の顔から俺の顔が離れると美砂は顔をなぜか怒っている。

「映画、見れないじゃない」

なんだそんな事か、と俺は笑った。
そのまま美砂を抱きしめて首元に顔をうずめた。
悪いけど映画はお預け。ずっとお預けを言い渡されてたんだ。
もう我慢の限界だろう――?


―おわり―
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