Short Novel

□失恋ラブソング
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「馬鹿だろう、お前」

部屋に響いた声にあたしは読んでいた雑誌から顔を上げた。そこには椅子に座る裕太が居て、呆れたようにあたしを見ていた。
そんなことを言われる理由が分からなくて裕太を見れば、ため息をついて雑誌を取り上げられた。そのままあたしの隣に座る。
こんなに近くに居るのにちっとも甘い空気にならないのは、裕太があたしの気持ちを知っているからだろう。知っていて、何も言わないでくれる。

「馬鹿?」
「なんで聞き分け良い子になってんだよ」

それだけで裕太が何を言いたいのかが分かった。なんで言わなかったのだ、と言いたいのだ。裕太は。
あれが最後のチャンスだったかもしれない。でも幸せそうな姉さんになんて言えたの?「あたしも剛さんが好きなの」って?

「…いいの」
「由梨、」
「これでいいの」

困る顔がみたいわけじゃない。困らせたくもない。幸せなら、二人が幸せだと笑ってくれるならそれでいい。
裕太は黙ってあたしを抱き寄せた。頭を抱えるようにして、自分の肩に押し付ける。あたしはそれに甘えて少しだけ泣いた。
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