Short Novel

□彼女の事情、彼の行動。
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ケイちゃんは私の家の近所に住んでる。私が小学生の時からの付き合いだから、もう十年くらいになるんだ。ケイちゃんの家はなんか複雑な事情があるらしく(詳しくは教えてくれなかった)アパートで独り暮らしをしている。
私は生活能力が皆無のケイちゃんが心配だからこうして様子を見に来ているのだ。…何て言うのは方便で、本当はケイちゃんに会いたいから。

「部屋、掃除しちゃうね」
「ん。俺の部屋には入るなよ」
「分かってるよ」

毎回言われている言葉におざなりな返事を返した。これは私がケイちゃんの家に出入りするようになってから言われるようになったこと。ケイちゃんは私を部屋に居れたがらない。だから私はケイちゃんの部屋に入ったことがない。一度も。

「食べたの、流しに突っ込んでおいてね」

片手を上げて応じるケイちゃんの背中を見てから私は簡単に掃除機をかけていった。そんな自分に苦笑する。こんな風にケイちゃんの家に出入りするようになったけど、ケイちゃんは相変わらずだった。
ケイちゃんのことは好きだ。だけどケイちゃんは私のことなんか、何とも思っていないのだろう。良くて妹くらい。
それが分かっているから私は何も言えないのだ。関係が変わるのが怖いから。
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