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□放課後アダージョ《番外編》
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お正月だからか、人の少ない住宅街を抜けながら柳瀬の家を目指す。本当は帰るつもりだったけど、柳瀬ママが初詣に行く前に「おせち用意するわね」と言ってくれた。
一回帰ってから朝に行こうかな、と思ったけど柳瀬が繋いだ手を離さずに私を引っ張っていくから私も何も言わずについていく。冷たくなった体温に、柳瀬の温もりが気持ち良い。

「眠い?」

目を擦る仕草をした私を見て柳瀬が私を振り返る。首を振ったら「嘘、」と言って小さく笑った。確かに眠いわけでは無い。でもなんだか勿体無くて。柳瀬と過ごす毎日を大切にしたいから。
柳瀬が引っ張るように私を引き寄せる。近くなった距離に私の心臓が少し跳ねた。「帰ったらちょっと寝よう。顔色が良くない」顔を覗き込んだ柳瀬が呟く。寝不足の自覚はあったから私は苦笑して頷く。

「あ、でも服は?」
「蛍から借りればいい」

柳瀬は私を家に帰す気は無いらしい。後で蛍さんにお礼を言わなきゃな、と思いながら私は柳瀬と繋ぐ手に力を込めた。
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