10/10の日記
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愚か者の後悔
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どれだけの言葉を重ねても君には届かない。
いつから君は、諦めたような笑顔を浮かべるようになったのだろう。
いつだって他のことを優先してきた。
彼女の約束より、友達の約束。
彼女とのデートより、サークルの女友達との買い物。
彼女の誕生日より、大学の飲み会。
いつの間にか彼女は約束を強請ることはなくなった。
彼女が話しかけてくることがなくなり、会話が減った。出かけることもなくなって、彼女を大学で見かけるだけになった。
それなのに俺は本物の愚か者で、彼女から話しかけてくるべきだって根拠もなく信じていた。
想いの比率は彼女の方が大きくて、彼女はいつだって俺を追いかけてくるって思っていたんだ。
それが愚か者の見る幻想だって気づいたのは、すぐだった。
俺じゃない男が彼女の隣に居る。
話しかければすぐに返事をして、彼女の授業が終わるのをカフェで待っている。
友達に誘われているのに「他に約束があるから」と断っていた。
背筋に冷たい汗が出る。終わりの足音が聞こえるような気がした。
俺は彼女と鉢合わせる前に立ち去ることにした。
顔を見る勇気がなくて、決定的な何かを見る前に。
いつから彼女の笑顔を見ていないのだろう。心からの嬉しそうな顔を。
俺の前ではいつだって諦めたような暗い笑顔。
うつ向いて、最後の方は目も合わなかった。
俺たちは――俺はいつから間違えた?
部屋に帰り、明かりを付ける。殺風景な景色に違和感を感じる。
あぁ……。彼女が居ないからか。
彼女が持ち込んだものはいつの間にか姿を消し、この部屋に来なくなってしばらく経つ。
ふと、鞄の中の携帯が震えたのを感じた。
アプリを開けば、彼女からひと言。
『話したいことがあるの』
きっと内容は俺が想像している通り。
どれだけ後悔しても、愚か者の俺の後悔は尽きないのだろう。
―END―
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