多種
□天国と地獄
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村はずれの森の中を探して歩き回る。
(まったく…なんで俺なんだよ。他にも手の空いてるヤツなんて山ほどいるってのに…。)
アイツの姿が見えなくなると見つけてこいと命令されたり頼まれたりするのはいつも俺だ。
アイツ自身のことは別に嫌いではないけれど迷惑をかけられるのは嫌だ。
「ったく…どこに居んだよ…。」
「何が?」
この森に入ってから1時間経った。
みつからな過ぎてつい口に出してしまった言葉に返事が返ってきたことに驚きつつ辺りを見回す。
「っお前!どこ行ってたんだよ!」
アイツ…ジンは木の上からこちらを見下ろしていた。
「どこにも行ってないよ。ずっとここに居た。」
「うるせぇ。ったく…毎回お前が消えると迷惑被るのは俺だってわかってんだから何か一言でも言ってから消えろよな。めんどくせぇ。」
「今回は何時間かかったの?」
「1時間だよっ。」
「前回より早くなったじゃん。」
「うるせえよっ!ほら、行くぞ。」
「うん。」
そう言って木から飛び降りると、俺の後について歩き始める。
それを確認して俺はもと来た道を戻る。
「ジン・ラルフディア!魔法の実技の授業をサボるとはどういうことだ!何かやむを得ない理由があるんだろうな?もしないのであれば罰として1週間遅刻禁止にするぞ!!」
本来ならば罰則は反省文300字以上+停学なのだが、ジンの場合はそれでは罰にならないので強制登校が罰則になる。
「急に森でボーっとしたくなったのでやむを得ず授業を休みました。」
ジンは悪びれた風も無く堂々と言ってのけた。
「そんな理由が認められると思っているのか!お前は戦闘中に眠くなったら眠るのか!」
「はい。あ、勿論安全地帯で。」
「ふざけるな!!戦地に確実な安全地帯などあるものかっ!」
「えー…」
「えー、じゃない!お前は明日から1週間強制登校だ!わかったな?!ったく…。」
そう言って実技魔法の先生はどこかに行った。
「お前が説教されるのになんで俺も一緒に居なきゃいけないんだよ。」
「まあまあ、そんな堅いこと言わずに。ね?」
「ね?じゃねぇよ。俺は帰るぞ。」
「俺も帰る。一緒に帰ろうよ?」
「今日はもうお前の迷惑には付き合わないからな。」
「本当にピンチになったらよろしく!」
「ねぇだろ。」
「わかんないじゃん!」
そう言いながら結局二人で帰路についた。