短編
□俺にも半分
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「何かお前、隠してねぇか?」
机に座っている私を不動は睨みつけた。アイラインでも引いたみたいにキリッとした目に、私は一瞬どきりとした。これが蛇に睨まれたカエルってやつなの?とにかく手も足も出ない。逃げたいけど逃げられない。不動の目の前で私は逆らうことはまずありえないこと。これでも私たちはカップルなんだけど、主導権は彼にある。そんな訳だから私は一歩引き気味に彼に笑いかけた、「何で?」と。すると、眉間にシワをたくさん刻んだ不動はもっと不機嫌になる。
「俺に嘘つけるとでも思ってんのかよ、おめーは」
「うぐっ」
不動は私の頬をつまんで引っ張り、にっこりと笑った。目は笑ってはいないんだけども。何て言うか、馬鹿にしたみたいな余裕のある笑みって言えば良いのかな?確かに彼に言われた通り私にはちょっと悩みがある。たぶん彼は心配してくれてるんだと思う。だけどほんとにたいしたことないから、私は言いたくないの。
「わ、私、不動に何言われても話さないからね…?」
「ふーん、偉くなったんだな」
「え、その…」
「ほら、早く言え」
「でも、たいしたことないし…」
不動は動じなかった。全く表情を変えずに、飄々としていて、私にはもう逃げることができなそうだった。
「あのさー、独り占めしてんなよな」
「…?」
「辛いことがあるならよ、俺様が半分背負ってやるから」
不動は冷たい人だと勘違いされてしまう。だけど、ほんとは誰よりも優しい彼。聞き方とかはちょっと雑なんだけど。一番に私を優先させてくれる。だから私も彼の背中にのしかかる辛いことを、半分こしたいと思えるんだ。
(実は3キロも太ったの)
(……)
何それー
20100702